2025年4月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30      
無料ブログはココログ

リンク集

カテゴリー「無線(工作)」の115件の記事

2025年2月24日 (月)

CMOSキーヤー Ver.3 の製作

その後も JO1VYV 局と何度かやりとりさせていただき、
その中で話題として挙がった
 ダイワインダストリ社のエレキー DK-200 / DK-210 の回路をベースに、
 短点メモリー/長点メモリーのアクセプト区間を可変できるもの
というアイデアを拝借し、CMOS キーヤー Ver.3 として作ってみました。

なお、DK-200/DK-210 の回路図と取扱説明書は、
現在でも下記からダウンロードできます。

回路図  :http://www.daiwa-industry.co.jp/ftp/DK-200_210_schematic.pdf
取扱説明書:http://www.daiwa-industry.co.jp/ftp/DK-200_210_manual.pdf

アクセプト区間とは、次に送出する符号の予約 (メモリー) を、
いま送出している符号の何パーセントの期間に受け付ける (アクセプトする)
かのことで、下記記事でも少し触れています。
https://ji3csh.air-nifty.com/blog/2020/08/post-c0eeaa.html

 


■回路■

CMOS キーヤー Ver.3 は、電源電圧を 9 V として再設計。
サイドトーンモニター回路で使用するオペアンプは、
9 V でも使用可能な NJM4556AV に変更。 
発振出力振幅は変更するつもりはなかったので、
ウィーンブリッジ発振回路 AGC 用抵抗の値は Ver.2 から変更せず。

DK-200/DK-210 の回路にある TUNE と SEMI (バグキーモード) は
特に必要性を感じていないので省略。

その他、
・サイドトーンモニター回路の電源が OFF できない問題を対策
・サイドトーンモニターの音量を絞ったときに残留しているノイズ (発振出力信号の漏れ) を対策
・ライン出力を削除
・外部キー入力回路の追加 (ただし、エレキー出力優先)
を盛り込みました。

できあがった回路図は以下のとおり。
20250224_0001

スピード調整は Ver.2 と同じく、16 wpm 〜 38 wpm の 12 段切り替え。
抵抗は別基板に実装。

サイドトーンモニターを ON したとき、
ヘッドホンで聴いていると耳が痛くなるぐらいの派手なポップ音が発生するので、
サイドトーンモニター ON 時のミュート回路も追加 (別基板に実装)。

20250224_0002

 


■基板■

CMOS キーヤー Ver.3 のメイン基板は面実装部品にこだわり、
コネクタ以外は全て面実装部品で構成。
基板は毎度の JLCPCB に依頼し、4 層基板で製作。
この程度の回路で 4 層基板を使用するのはどうかと思いましたが、
電源 / GND 配線を内層で引くことで他の配線がぐっと楽になり、
かつ大幅なコストアップにはならないので、迷わず 4 層を選択。

20250224_0003

別基板は、片面銅箔の紙フェノール基板 (FR-1) を用いて自作。

20250224_0004

 


■組み立て■

生基板自体は 1 月中旬に入手していたのですが、
仕事が多忙で、合間を見て組み立てていきましたので、
時間が掛かってしまいました。

メイン基板 (表面)

20250224_0005

メイン基板 (裏面)

20250224_0006

別基板 (表面)

20250224_0007

別基板 (裏面)

20250224_0008

 

これらの基板は、Ver.2 で使用していたケースに収納。
電池ケース (単三 × 6 本用) が大きくなり、結構キツキツな状態。

20250224_0009

メイン基板と別基板は二階建て構造。メイン基板は上段。

20250224_0010

 


■動作確認■

特に問題なく、すんなり動作しました。

サイドトーンモニターは、Ver.2 での不具合は解消されており、
ボリュームを絞ってもノイズ (漏れ信号) は聞こえませんでした。
音量が若干小さいように思いますが、実使用では許容範囲内です。

スピード設定も、ほぼ目標値どおりとなっています。
1 短点の長さが 60 ms のとき 20 wpm として換算すると、

設定値
(wpm)
1短点長 実測値
(ms)
換算スピード
(wpm)
16 75.20 16.0
18 67.40 17.8
20 60.20 19.9
22 55.20 21.7
24 50.20 23.9
26 46.40 25.9
28 43.00 27.9
30 40.20 29.9
32 37.60 31.9
34 35.40 33.9
36 33.60 35.7
38 31.50 38.1

 

アクセプト区間の切り替えによる差異は、何となく感じるかなというところです。
いろいろと試した結果、
・短点メモリーは、長点符号の 50 % 区間
・長点メモリーは、ON (こちらは 0 % か 100 % しかない)
が自分にはしっくりくるかなという感じです。
ただ、スピードが遅いときは、短点メモリーは 75 % でも良いかなとも思います。
(ゆっくりの和文で、 を打ちたいところ、短点が一つ欠けてよく  になってしまう)

 


私の常用エレキーは、これで完成形にしようと思います。

2025年2月22日 (土)

KiCAD 9.0.0 リリース

KiCAD の 8.0.9 と 9.0.0 が立て続けにリリースされました。

https://www.kicad.org

KiCAD 8 で充分事足りているので、
しばらくは、8.0.9 で様子見しようと思います。

2024年10月21日 (月)

DAIWAエレクトロニックキーヤー DK-200/-210の回路を調べてみました

きっかけは、先日 JO1VYV 局から届いた 1本のメールです。

その内容は、2020年8月20日に書いた
 「汎用 CMOS ロジック IC を使ったキーヤーの製作」
の文中で、
昔発売していた、DAIWA のエレキー DK-200 / DK-210 がこの回路を採用していたと思います。
の一文に対するコメントでした。

 


JO1VYV 局は、開局当時より DAIWA エレクトロニックキーヤー DK-210 を
使用しておられたようで、その後エレキーをいろいろと自作されたものの、
DK-210 と同じ使用感のものに巡り会うことができなかったとのことです。

自作されたエレキーは CQ 誌などの雑誌記事の回路が元になっており、
DK-200 / DK-210 も何か元となる回路があるのではと探し続けておられましたが、
上記の一文で長年の疑問が解けたとのことでした。

その後何度かメールでやりとりし、情報交換させていただきました。

DK-200 / DK210 のスクイーズ動作時での短点メモリは、
長点の後半1/2期間のみ受け付けるようです。
JO1VYV 局も私も、長点後半1/2期間の短点メモリの DK-200 / DK-210 に
使い慣れて (癖がついて) しまい、リグ内蔵のエレキーを含む他のエレキーでは馴染めず、
短点が余計に送出されてしまうようになってしまったようです。

JO1VYV 局曰く、短点メモリの位置と打ちやすさの違いの関係などを
気にされるような方は周囲にもおられなかったようなので、
同じ悩み (?) を語っていた私の拙筆記事に共感をいただいたようです。

 


さて、ここで一瞬不安がよぎりました。

上述の、「昔発売していた、DAIWA のエレキー DK-200 / DK-210 がこの回路を採用していたと思います。
の一文は本当でしょうか。

その昔、DK-200 / DK-210の回路図 (取扱説明書に記載がありました) を見たときに、
詳細に比較したのか、使用されているICを見て類似していると思い込んだのか、
当時のことは思い出せません。

 

JO1VYV 局から DK-200 / DK-210 の取扱説明書のコピーを送っていただきましたので、
原典と思われるCQ 誌 1981 年 9 月号に掲載の
 「アクセプト区間を工夫した メモリー付きエレキー」(JA4DWQ OM 著)
の回路図と、再度比較してみました。

 

20241021_0001
DK-200 / DK-210 取扱説明書 (JO1VYV 提供) より抜粋 (低解像度に加工)

 

20241021_0002
CQ 誌 1981 年 9 月号の記事より抜粋 (低解像度に加工)

DK-200 / DK-210 の回路図を、論理記号レベルに落とし込んだ形で
KiCad の回路図に入力していきました。



結論としては、
予想どおりDK-200 / DK-210の回路はCQ誌の回路と基本的に同等であり、
CQ誌の回路がベースとなっていると思われます。

20241021_0003
DK-200 / DK-210 取扱説明書 (JO1VYV 提供) より抜粋 (低解像度に加工)

20241021_0004
DK-200 / DK-210 回路を論理記号レベルに落とし込んだ回路図 (低解像度に加工)

この回路図を見ると、DK-200 / DK-210短点メモリーも、
長点の後半50%部分で掛かるようになっていることが分かります。

ただ、基準クロック発生部分がちょっと異なっていたり、
TUNEやSEMI (バグキーモード) などが追加されていたり、
WEIGHTで符号を鈍らせる回路が追加されていたりと、
いくつかアレンジされている部分もありました。

これで私もスッキリしました。

 


今回のやりとりでは短点メモリの掛かり方だけでいろいろと話題は盛り上がり、
こんな細かいことではあるものの、奥が深いなぁと感じました。

素晴らしい回路を考案され、CQ誌に投稿された JA4DWQ OM と、
それをベースに使いやすいキーヤーを製品化した (と思われる) DK-200 / DK-210 に感謝しつつ、
今回自作した CMOS キーヤー (Ver.2 ですが) を使い続けていきます。

JO1VYV 局は、
「ロジックICで構成したエレキ―はアマチュア無線の文化遺産だと思っています」
と仰っていました。
こんなマイナーなブログの誰も感心を持たないような記事に興味を持っていただき、
大変嬉しく思います。

2024年6月30日 (日)

負電圧出力チャージポンプ IC NJW4191

NJW4191 は、大きな出力電流は取れないものの、
手軽に正電圧から負電圧が得られる便利な IC です。

このような反転出力が得られるタイプのチャージポンプ IC は、
正側と同じ値の負電圧 (例えば、+5 V → -5 V) が得られるものが多いですが、
この IC は負帰還を掛ける電圧を調整することにより、
それ以外の電圧 (例えば、+5 V → -3.3 V) も得られるという、
より便利な IC です。

※NJW4191 シリーズのデータシートより引用
20240630_0001

出力と GND 間に挿入した抵抗で分圧した電圧を FB 端子へ負帰還させることにより、
出力電圧が設定されます。

抵抗値の設定は、下記のとおりです。

※NJW4191 シリーズのデータシートより引用
20240630_0002

これを見ると、先週「出力電圧可変型 三端子レギュレータの電圧設定抵抗値」について書いた内容と同じように、
式中の分数の分母が R2 すなわち出力と FB 端子の間の抵抗となっています。

先週記事を書いたのは、実はこの IC を使おうとして失敗したからなのです。

 


実際に基板を組んで動作させてみました。

20240630_0003

DC 9 V を入力し、三端子レギュレータで 5 V に変圧してから、
NJW4191で -5 V も生成させる回路になっています。
74HC4053 を両電源で動作させ、ゼロバイアスの信号を切り替えするような実験回路です。

この基板を組み立てたとき、NJW4191 の電圧設定抵抗 R1 と R2 を逆に間違えていたので、
約 -1.6 V 程度しか出力せず、原因特定するまでしばらく掛かってしまいました。
データシートをよく読めばすぐに分かる話なのに。

R1 と R2 を適切な状態に戻せば、無事 -5 V を得ることができました。

 


CQ マシーン用に検討しているボイスレコーダー用 IC の APR33A3 の音声入力回路で、
ノイズを回避するために昨年末からいろいろと実験しているものの、
なかなか上手く解決できません。

上記の 74HC4053 を使った回路や以前に記事を書いたマイクアンプの検討も、
それに関連する内容です。
ただ、いま 74HC4053 の手持ちが無く実験中断中で、牛歩のような進捗です。

2024年6月23日 (日)

出力電圧可変型 三端子レギュレータの電圧設定抵抗値

自分自身の備忘録です。

出力電圧可変型の三端子レギュレータは、外付けの抵抗で出力電圧を設定します。
抵抗値の決め方については三端子レギュレータICのデータシートに記載されていますが、
二通りのタイプがあるので注意が必要です。

 


例1. NJW4106のようなタイプ

■NJW4106のデータシートより抜粋■
20240623_0001

ADJ端子 (帰還端子) には、出力ーGND間の抵抗で分圧した電圧を入力します。
出力電圧は上式で決まりますが、式中の分数の分母は R1 すなわちADJ端子ーGND間の抵抗です。

オペアンプを用いた非反転増幅回路と照らし合わせて考えれば、とてもイメージしやすいです。
また、DC-DCコンバータの電圧設定も、大抵この形になっています。

出力電圧可変型の三端子レギュレータは、全てこの形であると思い込んでいました。

 


例2. NJM317のようなタイプ

■NJM317のデータシートより抜粋■
20240623_0002

例1と同様にADJ端子 (帰還端子) には、出力ーGND間の抵抗で分圧した電圧を入力します。
 (ADJ端子の電流は小さいので、これを無視すれば) 出力電圧も似たような式で決まります。
しかし、式中の分数の分母は R1 すなわち出力ーADJ端子間の抵抗です。
例1と比較すると、分数の分子/分母が逆になっているのです。
これには気付きませんでした。

内部回路を見てみると分かりますが、ADJ端子に帰還させた電圧と比較する基準電圧が、
例1ではGND基準 (GND + Vref)、例2では出力基準 (出力電圧 + Vref) と異なっているからです。

例2の回路を、例1での計算式で設計してしまうと、目標値と異なった出力電圧になってしまいます。
(目標より低い電圧になってしまうと思います)

 


これは一例に過ぎないと思いますが、
何でも思い込みで設計してしまうと失敗してしまいます。

基本に立ち返り、データシートをちゃんと見ることが重要なのです。
自分に対する戒めとして。

2024年5月26日 (日)

M54821P を用いた5桁周波数カウンタをケースに組み込み

周波数カウンタの基板を作ってから長らく放置していましたが、
ようやくケースに組み込んで完成させることができました。

周波数カウンタの製作記事はこちら
M54821P を用いた5桁周波数カウンタの製作

 


元々はトランスを組み込んで AC 100 V から電源供給するようにしたかったのですが、
無計画にケースを購入し、基板を作ったので、トランスがケースに収まりきらず、
製作意欲喪失で五年近くも放置状態となっていました。

AC 100 V からの電源供給を諦め、
AC アダプタから DC 9V を供給することで妥協することにしました。
これで、何とかすべての基板がケース内に収まりました。

AC アダプタのプラグは、センタープラスとセンターマイナスがあるので、
どちらにも対応できるよう、電源基板のブリッジダイオードは残しました。

20240526_0001

LED 表示基板への配線は少し長めですが、結束バンドでばらけないようにして、
基板の周囲をぐるりと引き回しました。

 

20240526_0002

 

フロントパネルは殺風景です。
また、BNC コネクタの位置が微妙に真ん中よりです。
パネルレイアウトを意識せずに基板を作ったのが原因です。
デザインセンスがないのがバレバレです。

LED 表示の窓は、内側に 1 mm 厚の透明塩ビ板を貼り付けて保護しています。
また断面は黒色のペイントマーカーで塗りつぶして、
アルミ素地の銀色が目立たない様にしています。
写真では残せていませんが、LED 基板取り付け用ビスにも黒のペイントマーカーを塗っておきました。

20240526_0003

 

リアパネルは、DC ジャックと電源スイッチです。
ヒューズは省略しています。

20240526_0004

 


まあ、周波数カウンタとしての利用価値は低いので、
これからも登場機会はほとんど無いと思います。

2024年2月25日 (日)

KiCAD 8.0.0 リリース

タイトルのとおりですが、
7.0.11が出たばかりなのに、なんと 8.0.0 もリリースされました。
https://www.kicad.org

取りあえずダウンロードはしましたが、インストールは躊躇しています。
しばらく様子見でしょうか。

 


無線のアクティビティが下がっているので、無線ネタがなかなか書けません。

2024年2月23日 (金)

KiCAD 7.0.11 リリース

CADソフト KiCAD の 7.0.11がリリースされました。
https://www.kicad.org

KiCAD Version 8 rc3 までリリースされているなかでのリリースなので、
Version 7 としては最後のリリースになるのでしょうか。

早速インストールさせていただきました。

2024年2月18日 (日)

マイクアンプ Ver.3 の製作

三年ほど前にもマイクアンプを作りましたが、今さらながらちょっと気になるところが出てきました。
マイクアンプ Ver.2 の製作 (その1)
マイクアンプ Ver.2 の製作 (その2 : 完成)

無信号時のノイズフロアですが、下図のように低周波領域で持ち上がっています。

20210104_0008

作った当時はあまり深く考えませんでしたが、
オペアンプで発しているノイズではないかと思い始めました。

低ノイズと謳われているオペアンプでも、CMOS タイプとバイポーラ (または J-FET) タイプとではノイズ特性が異なります。
入力換算雑音電圧密度が同じような値でも、規定している周波数がバイポーラ (または J-FET) タイプの方が低いです。
同じ低い周波数で比較してみると、CMOS タイプの方が入力換算雑音電圧密度が大概大きくなります。

前回作ったオペアンプは、ボルテージフォロアと 10 dB 増幅に使用したのですが、
帯域制限しなかったので、特に低周波領域でノイズが大きくなってしまったと思われます。

周波数が低くなるほどノイズが大きくなるのは、オペアンプの 1/f ノイズが見えているのだと思います。

 


そこでノイズ特性を改善させるため、今回オペアンプを使わない構成でマイクアンプを作り直してみることにしました。

20240218_0001
20240218_0002 20240218_0003

電源電圧を 9 V に変更することにより、
トランジスタ二段でも開ループ利得が 約 71 dB の増幅回路を構成することができました。
約 30 dB の負帰還を掛けて、仕上がり利得が約 42 dB の増幅器にしています。

最初はエミッタフォロワの出力から負帰還を掛けていましたが、
どうも波形がすぐに歪んでしまうので、二段目の出力から負帰還を掛けるように変更しました。

出力段のエミッタフォロワは、J-FET による定電流源で駆動するようにしてみました。

入力部のバイアス回路は、PSRR を考慮して少し形を変えてみました。
スマートな回路ではありませんが、仕方ありません。

 


正弦波信号を入力端子から入れて、波形を見ていきます。

約 2 Vp-p の出力はそれなりに得られています。

20240218_0004

約 2 Vp-p の出力時の二次歪みは、-60 dB 弱です。
ノイズフロアも、前作より下がったように思います。

20240218_0005

10 dB 入力レベルを下げてみると、二次歪みは -70 dB ほどになります。
三次歪みは、ほぼノイズレベルです。

20240218_0006

ホワイトノイズを入力して周波数特性を見てみます。
低域から 20 kHz 弱まで、ほぼフラットです。

20240218_0007

最後に無信号時のノイズです。
低周波領域のノイズ持ち上がりは見られず、ほぼフラットです。

20240218_0009

 


結論として、ノイズ特性の改善はできたように思います。

ただ、エミッタフォロワから負帰還を掛けたときの波形歪みは、
いろいろな箇所を疑ってみましたが、改善させることはできませんでした。

心残りで残念ですが、結果オーライということで、今回はこれで行こうと思います。

 


2024/2/25追記

エミッタフォロワの出力から負帰還を掛けたときの波形歪みの原因は、発振でした。
無入力時に約 10 MHz の発振波形 (綺麗な正弦波) が見られました。

設計時にシミュレーションでも動作確認していたのですが、
過渡解析では発振波形は見られず、小信号解析 (周波数特性) は 100 kHz までは問題なかったので、
安心していました。
小信号解析を 100 MHz まで拡げてみてみると、10 MHz 付近でピーキングが見られ、
正利得時の位相も 180 ° 以上回ってしまっていました。
すなわち位相余裕が全く無い状態でした。これでは発振してしまいます。
この約 10 MHz の発振波形が負帰還の邪魔をして、波形歪みを起こしていたようです。
C6, R8, R9 の組み合わせを変えたりしても、位相余裕がさほど増えるわけではありませんでした。

エミッタフォロワの手前から負帰還を掛けた場合は、位相余裕がありました。
C6 を 330 pF にすると、(シミュレーション上ですが) 位相余裕は 45 ° 程度になりました。
C6 を増やしていくと位相余裕が増していきますが、(オーディオ信号帯域の) 高域の周波数特性が悪化します。
なので、C6 は 330 pF で良さそうです。

2023年12月29日 (金)

ボイスレコーダー用 IC APR33A3 の動作確認2 (音質確認)

今日もボイスレコーダー用 IC の APR33A3 について動作を確認してみました。

 

前回動作確認したときに、VOUT1 端子、VOUT2 端子の出力は PWM と書きました。
もう少し APR33A3 のデータシートを見てみると、
オプションで VOUT2 端子が DAC 出力 (アナログ信号出力) も設定できるようです。

20231229_0001
(APR33A3 Datasheet より抜粋)

具体的にどのように設定したらよいのか、データシートには明確に示されていませんが、
記載されている回路例にヒントがありました。

20231229_0002
(APR33A3 Datasheet より抜粋)

VOUT1 端子を 1kΩでプルアップすると、VOUT2 端子から D/A 変換された信号が出力されるようです。
DAC は電流出力のようなので、300Ωの負荷抵抗で電圧変換する必要があるようです。
おそらく DAC 出力は PNP トランジスタのオープンコレクタか、P-MOS のオープンドレインだと思われますので、
負荷抵抗は GND に接続するように示されています。

コンデンサは省略しましたが、1kΩのプルアップ抵抗と300Ωの負荷抵抗を付けてみたところ、
VOUT2 端子からアナログ信号が出力されることが確認できました。

 


そこで、いろいろと信号を録音して、Wavespectra で特性を調べてみました。
自作のデジタルモード用インターフェースを使い、
録音は USB オーディオコーデック IC を経由して、LINE IN に入力、
再生音は DAC 出力を USB オーディオコーデック IC を介して PC に入力
させました。

まずは周波数特性を調べるために、ホワイトノイズを録音、再生してみました。

20231229_0003

5 kHz 強のところで、スパッとフィルタが効いています。
サンプリング周波数が 12 kHz なので、アンチエイリアシングフィルタの特性としてはこんなもんでしょう。
音声帯域が 5 kHz ぐらいまであれば、無線用途でも何とか使えそうな気がします。

 

次に、正弦波 200 Hz の録音、再生

20231229_0004

何かサイドバンドや、それを含んだ高調波歪みがありそうです。

音も聞いてみます。

何かボコボコしたノイズが乗っており、かなり耳障りです。

 

正弦波 500 Hz

20231229_0005

 

正弦波 1000 Hz

20231229_0006

 

正弦波 2000 Hz

20231229_0007

 

正弦波 3000 Hz

20231229_0008

 

正弦波 4000 Hz

20231229_0009

 

正弦波 5000 Hz

20231229_0010

どの周波数にしても、ボコボコノイズが乗ってしまいます。

 

ちなみに、正弦波 4000 Hz で録音レベルを下げてみました。

20231229_0011

やはりボコボコノイズは乗ってしまいます。

 

ところが無入力で録音すると、このボコボコノイズが乗りません。
また、マイクから入力しても、ボコボコノイズは乗りません。

マイクから、1 kHz 正弦波 (PC での再生音) を録音してみました。

20231229_0012

マイクの特性なのか、入力レベルが適切でなかったのか分かりませんが、
二次、三次の歪みが少し見えます。
ただ、ボコボコノイズが無いので、低域のノイズフロアがフラットになっています。

音はどうでしょうか。

ボコボコノイズはありません。

 

最後に、Acrobat Reader DC の読み上げ機能を利用し、
(人工的ですが) 音声を録音してみました。
内容は、FT-991A の取扱説明書の一部です。

PC のスピーカーの音を拾っているので、ちょっと薄っぺらい感じがします。
マイクの特性かもしれませんが、低音があまり出ていません。
サンプリング周波数が低いせいなのか、ちょっと声がシャリシャリした感じです。

 

CQ マシーンとして使いたいと考えていますので、
どこまで自然な音に近づけられるのか、もう少し検討が必要な気がします。

 


2024/1/7 追記

オシロスコープで波形を確認しておきました。

負荷抵抗 330 Ω

20240107_0001

 

負荷抵抗なし (無負荷)

20240107_0002

電流出力かどうかの確認。
やはり、負荷抵抗なしでは信号の振幅は得られず、DC 電圧も High に張り付いています。

 

負荷抵抗 100 Ω

20240107_0003

目分量で測定しているので誤差はありますが、
負荷抵抗を小さくした分だけ DC 電圧や振幅は小さくなっています。
当然の結果だと思います。

 

負荷抵抗 1 kΩ

20240107_0004

DC電圧は負荷抵抗を大きくした分高くなっていますが、
振幅がほとんど変わらない結果となりました。
波形が歪んでいるような感じもしませんし、理由が不明です。

上記の結果から、DCバイアス電流 (出力無信号時の電流) は、
 880 mV ÷ 330 Ω = 2.6 mA
 260 mV ÷ 100 Ω = 2.6 mA
 2.24 V ÷ 1 kΩ = 2.24 mA
ということで、2.5 mA 程度だと思われます。

より以前の記事一覧