興味のない方は、どうぞここでページを離れてください。
CQマシーンを製作しようと思って30年近く前に入手したボイスメモリ用 IC「ISD2560」、
再び引っ張り出してきました。
今さらですが、その性能がどの程度のものなのか、もう一度詳しく確かめてみたくなったからです。
結論から言うと、ISD2560はギリギリCQマシーンに使えそうかな、という印象です。
以前に入手したISD1012 や APR33A3よりは良さそうで、この手の録再可能な1チップ IC は、
単純にサンプリング周波数の高低だけでは音質は語れないものがあることを思い知らされました。
かなり今さらな内容ですが、備忘録も兼ねて書いています。
■確認の目的
ISD2560をCQマシーンで使ったとき、果たして自分が納得できる性能が出るのか――。
今回はそこを確かめるのが目的です。
■評価環境
下の回路図をもとに基板を作り、実際に動作を確認しながら評価を行いました。

プリント基板は、今回も自作してみました。

音声の録音ですが、今回は MIC AMP(AGC AMP)は使わず、ANA_IN から直接信号を入力してみました。
AGC Filter は Vcc にプルアップして Gain Minimum とし、MIC AMP からの余計な影響を排除してあります。
具体的には、JP1 と JP2 をそれぞれジャンパで接続し、J6 の LINE_IN から信号を入れています。
ANA_IN から直接信号を入力したのは、MIC AMP の不要な AGC 特性を排除し、
この IC 本来の録音・再生性能を確認できるのではないかと期待したためです。
データシートによると、ANA_IN の最大入力レベルは 50 mVpp です。
また、ANA_IN の入力インピーダンスは 3 kΩ です。
今回製作した基板では、ANA_IN に 5.1 kΩ の抵抗が直列に接続されているため、
入力レベルは 3 kΩ と 5.1 kΩ によって分圧されます。
基板の LINE_IN に 100 mVpp を入力すると、
実際に ANA_IN に印加されているレベルは約 37 mVpp となります。
再生出力信号は、デジタルモード用インターフェースを通してPCに取り込み、
Wave Spectraを使って解析してみました。
ISD2560 の最大音声出力は 2.5 Vpp です。
一方、デジタルモード用インターフェースで使用している PCM2903C の最大音声入力
(フルスケール=Wave Spectra での 0 dB)は約 2.0 Vpp です。
PCM2903C の手前にはゲイン 1/5 倍の増幅回路を設けているため、
ISD2560 の最大音声出力を基準に換算したフルスケールは約 −12 dB となります。
少し特殊な設定ですが、解析時にはこの点を十分に考慮しておく必要があります。
電源経由で入ってくる 60 Hz のコモンモードノイズの影響を避けるため、
評価基板は電池で駆動し、PCもバッテリーで動作させて測定しました。
ノイズの少ない状態で特性を確認するにはやはりこれが一番です。
■評価結果
①Power Down モード

Power Down モードでは、ノイズレベルは -120 dB 以下です。
フルスケールが -12dB であることを差し引いても、さすがにノイズはほとんど気にならないレベルと言ってよいでしょう。
②Stand by モード

低周波領域では少しノイズレベルが上がりますが、
それでも -110dB 程度なので、実用上はほとんど気にならないレベルでしょう。
③無信号の録音/再生

さすがに、少しノイズが気になるレベルかもしれません。
低い周波数領域では -80〜-90dB程度、500Hz以上でも -100dB程度です。
特に 80 Hz 付近の成分が少し目立ちますが、何が原因なのかは今のところ不明です。
また、高い周波数領域に多くのピークが見られます。
どうやら、これらのピークは IC の個体差があるようです。
同じ型番でも、微妙に特性が違うものがあります。
録音データです。僅かにサーっといったノイズが聞こえます。

これは、同じ型番の 別の IC です。
先ほどの IC に比べると、80Hz に加えて 160Hz あたりのピーク も見られます。
全体的に見ると、若干ノイズ性能は先の IC よりも劣るかもしれません。

これは、手持ちの中でも 特性が一番悪かった IC です。
ピークの数も多く、レベルも高めなので、ノイズ性能はあまり良くなさそうです。
やはり個体差が影響しているようですね。
④ホワイトノイズ

ホワイトノイズを録音して再生し、周波数特性を確認してみました。
結果を見ると、おおむね 3 kHz くらいまでフラットな特性のようです。
⑤1 kHz 正弦波 (録音入力 100mVpp)

二次歪みは -50 dB 程度 なので、リニアリティはさほど悪くなさそうです。
ただ、1kHz のピーク周辺に見られるサイドバンドは、80 Hz または 160 Hz との相互変調によるものかもしれません。
やはり、低周波のノイズ成分が影響している可能性がありますね。
録音データです。信号有りの状態だけだと、さほどノイズは気にならなさそうです。
1 kHz と無信号の差を比較してみてください。無信号時のノイズが気になり出します。
⑥1 kHz 正弦波 (録音入力 50mVpp)
少し入力レベルを下げてみました。
その結果、二次歪みは -60dB 程度 まで改善しました。
ただし、1kHz のピーク周辺に見られるサイドバンドは、入力レベルを変えてもほとんど変化がありませんでした。
50 mV と無信号ノイズの差を比べてみてください。許容できますでしょうかね。
⑦100 Hz 正弦波 (録音入力 100mVpp)

⑧200 Hz 正弦波 (録音入力 100mVpp)

⑨300 Hz 正弦波 (録音入力 100mVpp)

⑩500 Hz 正弦波 (録音入力 100mVpp)

⑪800 Hz 正弦波 (録音入力 100mVpp)

⑫1.5k Hz 正弦波 (録音入力 100mVpp)

⑬2 kHz 正弦波 (録音入力 100mVpp)

⑭3 kHz 正弦波 (録音入力 100mVpp)

さすがに 3kHz 付近 までくると、折返しノイズのピーク(約5kHz)が目立ってきます。
やはり、きちんと アンチエイリアシングフィルタ を設ける必要がありそうです。
⑮4 kHz 正弦波 (録音入力 100mVpp)

サンプリング周波数が 8 kHz なので、その半分の 4 kHz ではもうまともに録音・再生はできません。
⑯5 kHz 正弦波 (録音入力 100mVpp)

折り返りが 3 kHz となって見えています。
■その他
ISD2560 を入手する以前に手に入れた ISD1012 についても、少し調べてみました。
録音時間は 12秒と短いものの、ISD2560 よりサンプリング周波数が高く、音質の向上が期待できそうだったからです。

しかし、期待はあっさり裏切られました。
ノイズレベルは -80 dB 程度 と ISD2560 より高く、音質もあまり良くなさそうです。
サンプリング周波数が高いだけでは音質向上には直結しないようですね。

1 kHzを録音したデータです。ノイズレベルが高いのが分かります。
さらに、以前測定した APR33A3 と比べても、APR33A3 の方がノイズレベルは高そうです。
こちらも単にサンプリング周波数が高いだけで、音質が良いとは言えなさそうですね。

■結論
ISD2560 のノイズレベル(ノイズフロア)とフルスケールの差は 約 70 dB あり、
この数値だけで言うと CQ マシーンに使用するにはまず問題なさそうです。
ただし、80 Hz や 160 Hz 付近のノイズピークが少し気になります。
実際に音を聞いてみると、かすかにノイズが重畳されているのが分かります。
CQ マシーンとして実際に使ってみたとき (特に FM モード)、気になるかどうかは
微妙なところかもしれません。
ISD1012 は期待外れだったので、もはやゴミです。
最近のコメント