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2026年7月 1日 (水)

DFPlayer miniの音質評価 ― CQマシーンへの適用性を検証 ―

CQマシーンの音源として DFPlayer mini の使用を検討し、
音質および制御方法について評価を行いました。

音声品質の指標として 100 〜4000 Hzの正弦波やホワイトノイズの再生出力信号のスペクトル
を測定し、あわせてCQマシーンとして必要な操作性についても確認しました。

20260701_0001

スペクトルを見る限り、高調波やノイズ成分は十分小さく、
CQマシーン用途としては十分良好な特性 であることが確認できました。

また、制御についてもマイコンによるシリアル通信は使用せず、
ADKEY機能によるハードウェア制御のみで必要な動作を実現できる ことを確認しました。
これにより、
 ・マイコン不要
 ・回路構成が簡素
 ・電源投入後すぐに使用可能
という、CQマシーンに適したシンプルな構成を実現できそうであることがわかりました。

 


■経緯


先日、CQマシーン検討用にボイスメモリ用ICのISD2560やAPR33A3を評価しましたが、
今ひとつ再生音質に満足できませんでした。

ボイスレコーダー用 IC APR33A3 の動作確認2 (音質確認)
ボイスメモリ用 IC ISD2560 の動作確認
ボイスメモリ用 IC ISD2560, ISD1012, APR33A3の比較まとめ

2026年3月29日の記事で、別案に考えが傾いていると書きましたが、
それがmicroSDカードに記録された音源データを高音質で再生できる DFPlayer mini だったのです。

これらボイスメモリ用ICの評価結果を踏まえ、DFPlayer miniの再生性能がどの程度のものか、
またISD2560やAPR33A3と比較して音質面でどの程度優れているのかを確認することを、
本評価の主な目的としました。

 


■評価回路


評価には下図の回路を使用しました。

20260701_0002

ADKEYには、再生/停止の操作を行うため、以下の機能を割り当てました。

・プルダウン抵抗 200 kΩ:Play Mode(interrupt / non interrupt)
・プルダウン抵抗 33 kΩ:Pause / Play
・プルダウン抵抗 0 kΩ:Segment 1
・プルダウン抵抗 3 kΩ:Segment 2
・プルダウン抵抗 6.2 kΩ:Segment 3
・プルダウン抵抗 9.1 kΩ:Segment 4

これらの機能はスイッチによる直接プルダウンでも動作しますが、
実際のCQマシーンではロジックICなどから制御することを想定し、
NチャネルMOSFETによるスイッチ回路で動作を確認しました。
使用したMOSFETのオン抵抗は最大4Ωであり、
ADKEYのプルダウン抵抗値と比較して十分小さいため、その影響は無視できます。

DFPlayer miniの動作電源は 3.3 ~ 5 V(Typ. 4.2 V)であるため、
5 V 電源から整流用ダイオード (1N4002) の順方向電圧降下を利用し、
約4.3 Vで動作させました。

評価では内蔵のスピーカアンプ出力を使用せず、
DAC_LおよびDAC_Rから再生出力信号を取り出しました。
L, Rチャネルを抵抗でミックスした後、オペアンプによるボルテージフォロワ
でバッファし、低インピーダンス出力としました。

また、IO1、IO2、およびシリアル制御入力(RX)は未使用とし、
必要に応じてプルアップできるよう配慮しています。

以下の評価基板を製作し、各項目について動作確認を行いました。

20260701_000320260701_0004
(左:基板部品面 右:基板はんだ面)

 


■評価用音源


評価用音源には、周波数特性および歪み特性を確認するため、以下の信号を用いました。
WaveGeneでwav形式のデータを生成し、microSDカードへ書き込みました。
 ・ 100 Hz 正弦波、-6 dBFS
 ・ 200 Hz 正弦波、-6 dBFS
 ・ 400 Hz 正弦波、-6 dBFS
 ・ 500 Hz 正弦波、-6 dBFS
 ・1000 Hz 正弦波、-6 dBFS
 ・1500 Hz 正弦波、-6 dBFS
 ・2000 Hz 正弦波、-6 dBFS
 ・3000 Hz 正弦波、-6 dBFS
 ・4000 Hz 正弦波、-6 dBFS
 ・ホワイトノイズ
 ・無信号相当 (1000 Hz 正弦波、-120 dBFS)
(いずれも、16bit 48kHzのデータ)

microSDカードへの音源データの配置については、
公開されている情報を参考に、
ルートフォルダではなくMP3フォルダへ保存する方法を採用しました。

DFPlayer miniのマニュアルには、wav形式をサポートしているとの記載はありません。
しかし、搭載されているYX5200のデータシートにはwav形式に対応していることが記載されており、
実際に問題なく再生できることを確認しました。

CQマシーン用途であればmp3でも十分実用になりますが、
今回は音質をできるだけ良くしたいという個人的な考えから、
評価および運用ともwav形式を使用することにしました。

 


■ 消費電流 測定結果


再生時および停止時の消費電流を測定した結果は、以下のとおりでした。

 ・再生時:32.72 mA
 ・停止時:21.32 mA

停止時でも約21 mA流れており、予想より大きい結果となりました。
このため、常時電源を入れたまま電池駆動で使用する用途には、やや厳しい印象です。

一方、再生時の消費電流の増加は、停止時の電流から約11 mAにとどまりました。
この値には再生インジケーター用LEDの電流も含まれているため、
デコーダICやコントローラIC自身の消費電流増加は数mA程度ではないかと推定されます。

今回の評価では、簡易的にダイオードのVfを用いて5 Vから4.3 Vに降圧しましたが、
この程度の電流であれば、音質向上を目的として電源電圧をより安定化させるため、
100 〜 200 mA定格の低ノイズLDOで4.3 Vを生成しても良さそうです。

なお、今回の評価ではDAC_L / DAC_R出力のみを使用し、軽負荷条件で測定しています。
内蔵スピーカーアンプでスピーカーを駆動する場合は、音量や負荷条件に応じて、
さらに大きな電流を消費すると考えられます。

 


■ 再生出力信号の波形 測定結果


再生出力信号の波形を、DAC出力で測定しました。
結果を以下に示します。

振幅は約1.4 Vppで、バイアス電圧は約1.5 Vでした。
今回は-6 dBFSの信号を再生しているため、0 dBFS換算では約2.8 Vppとなります。
バイアス電圧が約1.5 Vであることから、0 dBFSでは負側の振幅余裕は小さいものと考えられます。

20260701_0015

 

停止から再生に切り替えたときの波形も確認してみました。

20260701_0016

停止時も再生時も、バイアス電圧は約1.5 Vで変化はありませんでした。

この結果から、DAC出力の後段回路を設計しやすく、
停止⇔再生時にポップノイズ(ボツ音)が発生するリスクも低いことが分かりました。

 


■ スペクトル測定結果


ボイスメモリ用ICを評価したときと同様に、
再生出力信号をデジタルモード用インターフェースを通してPCに取り込み、
Wave Spectraを使って解析しました。

また、商用電源由来の 60 Hz ノイズの影響を避けるため、
評価基板は電池で駆動し、PCもバッテリーで動作させて測定しました。

 

100 Hz から 4000 Hz までの結果を以下に列挙します。
いずれの周波数においても目立った高調波は認められず、
スペクトルから判断する限りS/N比は80 dB以上と推定されます。
何より、スペクトルのノイズフロアが非常に低いです。

以前評価したISD2560やAPR33A3と比較するとその差は歴然としており、
再生品質は大幅に向上しています。

 

■100 Hz

20260701_0005

 

■200 Hz

20260701_0006

 

■400 Hz

20260701_0007

 

■500 Hz

20260701_0008

 

■1000 Hz

20260701_0001

 

■1500 Hz

20260701_0009

 

■2000 Hz

20260701_0010

 

■3000 Hz

20260701_0011

 

■4000 Hz

20260701_0012

 

■ホワイトノイズ

20260701_0013

ホワイトノイズでは、20 kHz付近までほぼフラットなスペクトルが得られました。
この結果から、周波数特性は低域から約20 kHzまでほぼフラットであることが分かります。

 

■無信号 (相当)

20260701_0014

ところどころスペクトルのピークが見られますが、ノイズフロアは-120 dB以下です。
音で確認しても、ほぼ無音です (私には、何も聞こえません)。

 

総じて、基本波以外の高調波成分などは十分低く抑えられており、
ノイズフロアも非常に低いことが確認できました。

以上の結果から、DFPlayer miniはCQマシーン用途として
十分以上の性能を有していると評価できます。

 


■ ADKEY制御の動作確認


■ プルダウン抵抗 200 kΩ:Play Mode (interrupt / non interrupt)

この機能はCQマシーンでは使用する予定はありませんが、
動作を確認しました。

電源投入時のデフォルト設定はinterruptモードでした。

例えば、Segment1の再生中にSegment2のスイッチを押すと、
Segment1の再生は直ちに中断され、Segment2の再生へ切り替わることを確認しました。

Play Modeのスイッチを1回押すとnon interruptモードとなり、
Segment1の再生中にSegment2のスイッチを押しても割り込みは発生せず、
Segment1の再生終了後までSegment2へは切り替わりませんでした。

以降、Play Modeのスイッチを押すたびに、
interruptモードnon interruptモードが交互に切り替わることを確認しました。

CQマシーンでは、送信中に他のメッセージへ即座に切り替えられる方が扱いやすいため、
実際の設計を想定してinterruptモードで動作確認を行いました。

 

■ プルダウン抵抗 33 kΩ:Pause / Play

再生中にこのスイッチを1回押すと再生が一時停止(Pause)し、
もう一度押すと停止した位置から再生が再開することを確認しました。

この動作は音楽プレーヤー用途では便利ですが、
CQマシーンでは一時停止よりも再生停止として使用したい場面が多いと考えられます。

そこで、BUSY信号と組み合わせて、再生中のみPlay / Pause信号を有効にすれば、
一時停止後に再度スイッチを押しても信号が入力されず、
実質的に「停止」機能として利用できるものと考えています。

BUSY信号を利用することで、
追加のマイコンを用いずに停止機能を実現できる見込みが得られました。

 

■ プルダウン抵抗 0 kΩ:Segment1
■ プルダウン抵抗 3 kΩ:Segment2
■ プルダウン抵抗 6.2 kΩ:Segment3
■ プルダウン抵抗 9.1 kΩ:Segment4

事前に調べた情報では、
microSDカードのMP3フォルダに保存された音声データは、
書き込み順にSegment 1、Segment 2、Segment 3、Segment 4
として再生されるとされていました。

実際に確認したところ、
このとおり書き込み順に各Segmentへ割り当てられ、
正常に再生されることを確認しました。

このため、あらかじめ書き込み順を管理しておけば、
各メッセージを任意のSegmentへ割り当てることができます。

 

■ Vol+, Vol-

今回の評価回路では、音量調整用(Vol+、Vol-)のADKEY抵抗は実装していません。

データシートによると、電源投入時の音量はデフォルトで最大に設定されています。
CQマシーン用途では音量を固定で使用することを想定しているため、今回は評価対象外としました。

 


■ まとめ


DFPlayer miniは、音質・S/N・周波数特性のいずれも
CQマシーン用途として十分以上の性能を有していることが確認できました。

また、CQマシーンに必要な機能、
 ・再生
 ・停止
 ・チャネル切り替え
が、ADKEYによるハードウェア制御のみで実現できることが確認でき、
長年構想していたCQマシーンへの適用に、ようやく目処が立ちました。

音質・制御性ともに十分な性能が確認できたため、
今後はDFPlayer miniを採用したCQマシーンの製作を進める予定です。

 


■ 最後に失敗談


評価当初は、IO1、IO2、およびRX端子をすべて33 kΩで約4.3 Vへプルアップした状態で
動作確認を行っていました。
この状態では、ADKEYの動作がマニュアルどおりにならず、不思議な挙動を示していました。

本来、これらの端子をプルアップする場合は、3.3 Vへ接続すべきです。

原因を調べるためネット上の情報を確認したところ、IO1およびIO2には内部プルアップ抵抗があり、
外付けのプルアップは不要であることが分かりました。
実際にプルアップ抵抗を取り外して電圧を測定すると、
いずれも約3.3 Vとなっており、内部プルアップが存在することを確認できました。

一方、RX端子はプルアップ抵抗を取り外すと電圧が不定となり、
内部プルアップは実装されていないことが分かりました。
そのため、シリアル通信を使用しない場合でも、
RX端子は外付けで3.3 Vへプルアップしておくことが望ましいようです。
プルアップのためだけに3.3 V電源を用意するのは実用的ではないので、
4.3 Vまたは5 Vから抵抗分圧によって約3.3 Vを生成してプルアップする方法が現実的でしょう。

IO1、IO2の外付けプルアップを取り外したところ、ADKEYはマニュアルどおり正常に動作するようになりました。

今回の評価により、
 ・IO1、IO2:未使用時はオープンのままで問題なし
 ・RX:未使用時でも3.3 Vへの外付けプルアップが望ましい

ということが確認できました。

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