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2022年11月の3件の記事

2022年11月23日 (水)

CMOSキーヤー Ver.2 の製作 (その2)

取りあえず基板は完成した CMOS キーヤーですが、
キーイングスピード調節のボリュームをどれくらいの抵抗値にするのが最適かが不明なので、
ちょっと調べてみました。

ちなみに、CMOS キーヤーの発振回路は下図のようになっており、
J1 の先に 1 MΩのボリュームを接続しています。
RC 発振回路の抵抗値としては、VR + 100 kΩ となります。
20221123_0001

 


モールスのスピードは、リグ (TS-590S) 内蔵キーヤーの
キーイングスピード表示を参照にしました。

リグのキーヤーと CMOS キーヤーを同時に動かし、
同期の取れたとき (サイドトーンで唸りが無くなるとき) の
ボリュームの抵抗値を測っていきました。

結果は、以下のようになりました。

wpm VR抵抗値 発振回路抵抗値
16 943 kΩ 1043 kΩ
18 833 kΩ 933 kΩ
20 746 kΩ 846 kΩ
22 659 kΩ 759 kΩ
24 600 kΩ 700 kΩ
26 538 kΩ 638 kΩ
28 498 kΩ 598 kΩ
30 463 kΩ 563 kΩ
32 416 kΩ 516 kΩ
34 384 kΩ 484 kΩ
36 367 kΩ 467 kΩ
38 339 kΩ 439 kΩ

キーイングスピードと発振回路の抵抗値をグラフにしてみると、

20221123_0002

キーイングスピード (発振回路の発振周波数)は、抵抗の逆数に比例するはずです。
抵抗値を逆数にすると分かりづらいので、横軸のスピードの逆数にしてみると、
ほぼ直線関係が得られました。

20221123_0003

この直線関係を用いて、欲しいキーイングスピード範囲から抵抗値を求めることができそうです。

 


ちなみに、20 wpm の短点の時間は、60 ms と言われているようです。
試しに、キーイング波形を見てみました。

ボリュームの抵抗値が 746 kΩ すなわち発振回路の抵抗値が 846 kΩ のときの、
連続短点のキーイング波形です。
確かに、ほぼ 60 ms になっています。

20221123_0004

ネットを検索していると、この手の発振回路の発振周波数 f は、$$f=\frac{1}{2.2\times R\times C}$$との情報がよく出てきます。
20 wpm (= 60 ms = 16.666 Hz) のときの定数

$R=846 [k\Omega]$
$C=0.047 [\mu F]$

を当てはめてみると、$$f=\frac{1}{2.2\times (846\times 10^{3})\times (0.047\times10^{-6})}=11.431 [Hz]$$と計算が合いません。

係数 2.2 のところを 1.5 にしてやると、$$f=\frac{1}{1.5\times (846\times 10^{3})\times (0.047\times10^{-6})}=16.766 [Hz]$$と現物に近い値になります。
なぜなのでしょうか。以下推測してみます。
(間違っていたら、どなたか突っ込んでください)

 

この手の発振回路は、抵抗 R とコンデンサ C の時定数で決まる充放電を
繰り返すことによって動作しています。

仮に CMOS ロジックの入力閾値を電源電圧 Vcc の 1/2 (Vcc = 5 V の場合は 2.5 V) だとすると、
コンデンサの充放電動作は、
  3/2 Vcc (= Vcc + 1/2 Vcc) → 1/2 Vcc (閾値) の放電 と
  -1/2 Vcc (= 0 V - 1/2 Vcc) → 1/2 Vcc (閾値) の充電 を
繰り返すことになると考えられます。
すなわち放電は初期電圧の 1/3 で閾値に達し充電に切り替わり、
充電は到達電圧の 2/3 (初期電圧基準でみると 1/3 の電圧)
で放電にが切り替わる動作を繰り返しています。 

RC 回路のコンデンサ電圧 $V$ と時間 $t$ との関係は、初期電圧を$V_0$とすると、
放電は$$V=V_0\times e^{-\frac{t}{RC}}$$充電は $$V=V_0\times (1- e^{-\frac{t}{RC}})$$になるかと思います。

ここで、$$V=\frac{1}{3}\times V_0$$を代入すると、$$e^{-\frac{t}{RC}}=\frac{1}{3}$$ $$-\frac{t}{RC}=\log_e{\frac{1}{3}}=-1.099$$ $$t=1.099\times R\times C$$
これは、半周期の時間なので、発振周波数 $f$ は、$$f=\frac{1}{2\times t}=\frac {1}{2\times 1.099\times R\times C}=\frac {1}{2.198\times R\times C}\doteqdot\frac {1}{2.2\times R\times C}$$となり、係数 2.2 はこれに由来しているものと思われます。

しかし、実際にはコンデンサの電圧は、3/2 Vcc 〜 -1/2 Vcc まで振れません。
なぜならば、CMOS ロジック IC の入出力端子には大抵 ESD (静電気破壊) 保護用のダイオードが内蔵されており、
おおよそ Vcc + 0.6 V、GND - 0.6 V でクリップされてしまいます。
電源電圧が 5 V の場合は、だいたい 5.6V 〜 -0.6 V の間で振れることになります。

実際にコンデンサの波形を見てみても、以下のとおりVcc + 0.5 V、-0.5 V でクリップされていることが分かります。
(電池の電圧の関係で Vcc = 約 5.5 V になっている)
閾値も厳密には、ぴったり 1/2 Vcc ではありません。

20221123_0005

であれば、先ほど計算した $t$ はどうなるかというと、$$初期電圧の\frac{2.5}{5.6}$$になるまでの時間になるので、$$-\frac{t}{RC}=\log_e{\frac{2.5}{5.6}}=-0.806$$ $$t=0.806\times R\times C$$ $$f=\frac{1}{2\times t}=\frac {1}{2\times 0.806\times R\times C}=\frac {1}{1.612\times R\times C}$$となり、実験結果の 1.5 に近い値が得られました。
しかし、Vcc が異なる場合 (例えば、Vcc = 9 V など) は、この係数はまた変わってくるはずです。

 

備忘録を残す良い機会になりました。

2022年11月 6日 (日)

リグの周波数精度 と デジタルモード の DF について

430 MHz 帯で FT8 を運用しているときに、低めの DF (500 〜 700 Hz ぐらい) で送信していると、
応答率が悪いのではと感じることがあります。

ひょっとして、自分のリグの周波数がずれているのではと思い、ちょっと調べてみることにしました。

 


調べるにしても、高精度な測定器は持ち合わせていません。
なので、ワッチしている各局にご協力?いただくことにしました。
(PSKReporter に上げていただいている情報を使わせていただきました)

PSKReporter で、私の電波を受信している局のところにカーソルを持って行くと、
画面左下に図のような表示がされます。

20221106_0001

この図の場合は、(おそらく) QRG が 144.460 MHz に設定されているのに対して、
Frequency = 144.462235 MHz なので、私の電波はDF = 2235 Hz で受信されている
ということになります。

この方法で、相手局とどれぐらい DF がズレているのかを確認してみました。
相手局の周波数が正確とも限りませんので、簡易的かつ相対的な確認になります。

 


■ 430 MHz 帯 (430.510 MHz) ■

電波の届く範囲が狭く、PSKReporter に上がる局が少ないので、三回見てみました。
(各回の A 局、B 局、・・・は、それぞれ同一局ではありません)

一回目 (自局 DF:2380 Hz)
 A 局:1971 Hz・・・-409 Hz
 B 局:1842 Hz・・・-538 Hz
 C 局:1830 Hz・・・-550Hz
 D 局:2229 Hz・・・-151 Hz

二回目 (自局 DF:2580 Hz)
 A 局:2051 Hz・・・-529 Hz
 B 局:2055 Hz・・・-525 Hz
 C 局:2243 Hz・・・-337 Hz
 D 局:2008 Hz・・・-572 Hz
 E 局:2491 Hz・・・-89 Hz
 F 局:1910 Hz・・・-670 Hz

三回目 (自局 DF:2450 Hz)
 A 局:1882 Hz・・・-568 Hz
 B 局:2045 Hz・・・-405 Hz
 C 局:1849 Hz・・・-601 Hz
 D 局:1873 Hz・・・-577 Hz
 E 局:2292 Hz・・・-158 Hz
 F 局:2073 Hz・・・-377 Hz

サンプル数が少ないですが、私のリグの周波数表示は 400 〜 600 Hz 程度高めになっていると思われます。
ただ先ほども書きましたが、正確かどうかではなく、あくまでも相手局との相対関係です。

これでは、DF を 500 〜 700 Hz に設定していると、相手局は 0 〜 300 Hz と
極端に低い DF で受信することになり、Water Fall グラフの範囲外になったり、
IF フィルタの通過帯域から外れて信号が減衰したりして (相手局の受信ウィンドウに入っていない)、
QSO には不利になっているものと推測されます。


■ 144 MHz 帯 (144.460 MHz) ■

ためしに、144 MHz 帯でも同じことを試してみました。
こちらの確認は一回だけです。

一回目 (自局 DF:2480 Hz)
 A 局:2374 Hz・・・-106 Hz
 B 局:2304 Hz・・・-176 Hz
 C 局:2501 Hz・・・-21 Hz
 D 局:2352 Hz・・・-128 Hz
 E 局:2235 Hz・・・-245 Hz
 F 局:2234 Hz・・・-246 Hz
 G 局:2239 Hz・・・-241 Hz
 H 局:2238 Hz・・・-242 Hz
 I 局:2235 Hz・・・-245 Hz
 J 局:2233 Hz・・・-247 Hz

2235 Hz ぐらいの局が多数を占めていますので、これらの局が正確な周波数のような気がします。
そうすると、私のリグの周波数表示は 250 Hz ぐらい高めになっていると推測されます。
430 MHz 帯より周波数が低い分、周波数表示のズレは少なくなっているのでしょう。

50 MHz 帯以下は確認できていませんが、
おそらくもっとズレは少ないのではないかと考えています。

 


相手局リグの IF フィルタ帯域設定や、WSJT-X /JTDX のウォーターフォールの
周波数範囲設定にも依りますが、相手局が受信しやすい 1000 〜 2000 Hz あたりを狙って、
上記で確認したズレ分を考慮した DF 設定をすると、応答率は改善されるのではと考えています。

このように、自分が使っているリグの傾向を掴んでおくと良いと思います。

2022年11月 5日 (土)

CMOSキーヤー Ver.2 の製作 (その1)

5 V 単電源のウィーンブリッジ発振回路も試作で上手く動作したので、
以前製作した CMOS キーヤーと組み合わせたものを作りました。

参考:汎用 CMOS ロジック IC を使ったキーヤーの製作
   5V単電源 ウィーンブリッジ発振器の試作
   5V単電源 ウィーンブリッジ発振器の追試

 


■回路■

回路図は以下のとおりです。
(図をクリックすると、多少大きく表示されると思います)

20221105_0001

基本的には、これまで検討、製作してきた回路の流用です。
キーヤーの変更点としては、出力のキーイングにフォト MOS リレーを使用しました。
先に繋がる機器の極性を不問とすることが目的です。

 

サイドトーンモニタ回路は、1/2 Vcc の基準電圧生成を抵抗分圧+ボルテージフォロワにしました。
試作検討段階では、いろいろとゴテゴテした回路にしていましたが、
基準電圧を抵抗分圧+ボルテージフォロワで生成した方が部品点数が少なく済むということと、
歪み特性を含めた回路安定性を考えると、結局は基本的な回路に戻した方がベターという判断となりました。

 

ヘッドホンアンプは、ステレオヘッドホンに繋げるよう、ダンピング抵抗の手前で L / R に分配しました。
オペアンプが 1 回路余ったので、ライン出力 ? も設けました。
(多分運用する機会は少ないと思いますが...) A2A や F2A での副搬送波にも使えると思います。

 

部品は、サイドトーンモニタ回路を中心に、面実装品へ変更しています。
 D1:1N4184W・・・キーヤーのクロック生成回路のダイオード 
 Q2:2N7002 (T2N7002BK)・・・フォト MOS リレー駆動用 FET
 IC8:TLP172A・・・キーイング用フォト MOS リレー
 D2:1SS154・・・ピーク検波用ショットキーバリアダイオード
 IC9:TC7S66・・・サイドトーンモニタスイッチング用

 

■基板■

パターン設計はいつもどおり、KiCADを使いました。
基板サイズは、85 mm × 60 mm に収めました。

20221105_0002


プリント基板は久しぶりに、JLCPCB で作製してもらいました。
基板が 2 ドル、送料が 1 ドル、合計 3 ドル で基板を作ってもらえるので、驚きです。
(PayPal を利用したので、手数料 0.5 ドル 取られましたが、それでも 3.5 ドル = 約 530 円)
基板発注してから、10 日ほどで手元に届きました。

 

組み立てには、半日ほど掛かりました。
キーヤー部の部品は、前回製作した基板から部品を移植して流用しました。

20221105_0003

 


■動作確認■

サイドトーンモニタ部のウィーンブリッジ発振回路は、少々フィードバック抵抗のカット&トライを要しましたが、
まあまあ綺麗な正弦波の発振波形が得られました。

20221105_0004

ウィーンブリッジ発振回路の出力で、2 Vpp 強の振幅が得られています。
フィードバックの抵抗 (R7 と R9) は、3.9 kΩ、390 Ω としました。

 

キーイング後の発振波形です。
カメラのシャッタースピードと、オシロスコープの掃引スピードの関係で、
波形の右側が切れたように見えていますが、ちゃんと連続して動作しています。

20221105_0005

ヘッドホンで聞いてみても、ちゃんとしたキーイング音が得られていました。
ただ、実用範囲ではあると思いますが、キークリック音が少し気になるかなという感じでした。

上図の波形で見ると、発振波形がスパッと ON / OFF しています。
また、発振波形とキーイングの周波数が同期していないので、
ON / OFF のタイミングが正弦波の 0°、180° (0 V となる位相) と合っておらず、
ランダムな位相で ON / OFF するような動作になっています。
これらが、キークリック音の要因であるのではないかと考えられます。

 

リグに繋いで、リグのサイドトーンモニタでも動作を確認することができました。
フォト MOS リレーは応答速度が遅いので、キーイングに影響しないか心配しましたが、
入力側 LED 電流 (IF) を約 8 mA 流した今回の設計では、キーイングスピードを上げても、
特に問題になるようなことはありませんでした。 


今回は基板の組み立てと、仮組みでの動作確認までとなりました。
ケースやスイッチ類を買ってきて、実用的なキーヤーとして完成させたいと思います。

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