単電源 ウィーンブリッジ発振回路の検討
ウィーンブリッジ発振回路を調べていると、
単電源の回路例は幾つか見つかるものの、
大概は正負電源を使った回路で紹介されています。
正負電源を使うメリットもありますが、
ちょっとした自作回路で負電源まで用意するのは面倒くさいので、
やはり単電源で動作する回路が欲しくなります。
自分でも単電源のウィーンブリッジ発振回路を考えてみようと思いましたので、
備忘録として残しておきます。
今回は実際に回路を組むのではなく、シミュレーションで検討します。
シミュレーターは、(あまり好きではないですが) LTSpice にしました。
ベースとなる回路は、Educational フォルダ内にある Wien.asc です。
このファイルをコピーして、Wien_SingleSupply.asc とでもしておきます。
macOS 版の LTSpice を初めて使ってみましたが、
Windows 版と見た目が全然違うので、少々戸惑いました。
当然でしょうが、計算値どおり約1.6kHzで発振しており、
歪みも少ないようです。
ベースとなる回路の確認ができましたので、
ここから Step by Step で単電源化していきます。
面倒くさいですが、一気に変えてしまうと、
どこでミスしたかが分かりにくくなるからです。
単電源の電圧は、一旦 9 V を目標にします。
9 V でこの回路が動作するかどうか確認するため、
V1 の電圧を 4.5 V、V2 の電圧を -4.5 V としてシミュレーションしてみます。
次に、単電源にします。
V1 の電圧を 9 V とします。
V2 の電圧は 4.5 V として、bias という net 名を付けます。
元の回路で -V の箇所を GND に、GND だった箇所を bias に変更します。
つまり、元回路から 4.5 V オフセットさせて動作させる形になります。
ここで、ピークホールド回路のダイオード D1 を、PNP トランジスタのエミッタフォロワに変えます。
この変更は、自分が理解しやすくするためなので、必須ではありません。
このとき、PNPトランジスタ Q2 のエミッタ抵抗は bias ではなく、電源 +V に接続します。
ピークホールド用コンデンサ C3 も同様に電源 +V に接続します。
C3 を GND に接続してしまうと、電源投入時に発振ループが最小ゲインからスタートするので、
上手く発振してくれない可能性がありますので注意が必要です。
次に、R4 の接続先の bias を無くします。
ここは、電圧 4.5V (=+V/2)、インピーダンス 10 kΩ なので、
+V と GND 間を 20 kΩ の抵抗分割に変換します。
C2 を GND に接続した影響か、発振開始が少し遅れるようになりましたが、
何とか発振しています。
(C2 を +V に接続した方が、若干発振開始が早いようです)
次は、ゲイン調整用 J-FET Q1 に接続されている bias を何とか無くすことを考えます。
AGC の電圧が若干変わるかも知れませんが、Q1 と R2 を入れ替えてみます。
最後に、R2 に接続されている bias を無くします。
先ほどの R4 と同様に、+V と GND 間の 9.8 kΩ の抵抗分割に変換します。
これで bias が消えましたので、V2 を削除します。
あと、R2 と R7 ですが、9.8 kΩ という抵抗は手に入りにくいので、
E24 系列の抵抗値で何とかなるように工夫します。
元々のインピーダンスが 4.9 kΩなので、1 kΩ と 3.9 kΩ に分解して、
1 kΩ の部分を 2 kΩ の抵抗分割に変換します。
何とか単電源でウィーンブリッジを動かすことができました。
ただ、あくまでもシミュレーションでの机上検討のお話です。
実際に回路を組むときには、もう少し検討が必要かと思います。
キーヤーのサイドトーン用に検討しようと思って始めましたが、
長くなってしまったので、キーイング回路の追加は別記事で残します。
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