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2022年4月の3件の記事

2022年4月24日 (日)

430MHz帯用 50Ω:50Ω 強制バランの検討(その4)

この週末は、430MHz帯用バランの組み立て、および調整をやってみました。

 


まずは、Uバランの調整から。

Uバランに使った同軸ケーブルは、フジクラ製の 3D-2V です。
同軸ケーブルでの損失を考えると、もっと太い同軸ケーブルを使うべきなのでしょうが、
取り回しが悪くなることと、長さがさほど長くないので、3D-2V で良しとしました。

同軸ケーブルの長さは 1/2 波長なので、433 MHz で合わせるとすると、
長さ $l$ は、$$l=\frac{300}{433 [MHz]}\times\frac{1}{2}\times0.67=0.232 [m]  (ただし、波長短縮率は 0.67 とする)$$となりますので、30cm程度の 3D-2V を用意しました。

3D-2V の片端を NanoVNA に接続し、もう一方の片端はオープンのままで、インピーダンスを測定します。
1/2 波長の伝送線路だと、入力端と出力端は同一のインピーダンスに見えます。
したがって、NanoVNA の測定値が ∞ [Ω] になる長さが、1/2 波長ということになります。

3D-2Vを切り詰めていき、22.2 cm のときに 433 MHz 付近で出力端が高インピーダンスになりました。
ただし、22.2 cm 長 3D-2V の両端は、マイクロストリップラインに接続するため、1.5 cm 程度同軸ケーブルを剥いています。
(なので、合計長さは 25.2 cm になります)
 ⇒片端をショートで調整した方が良かったと、後から思いました。
  (理論上はどちらでも同じなのでしょうが、オープンは色々と影響を受けやすいので)

20220424_0001 20220424_0002

一応これで、Uバランの材料は揃いました。
ちなみに、上記の結果から 3D-2V の波長短縮率を計算すると、0.654 になりました。

 


次に、先日作製したマイクロストリップラインにUバランを接続します。
3D-2V のポリエチレン絶縁体を通す穴は、φ3.5 mm で開けています。

20220424_0003

3D-2V の外部導体 (編み線) は、長くならないよう近くの GND ベタパターンにハンダ付けしています。

20220424_0004

 

マイクロストリップラインにUバランを取り付けたところで、
今度はマイクロストリップラインの長さを調整します。

正しい調整方法かどうかは分かりませんが、
マイクロストリップラインの出力端をショートさせ、入力端のインピーダンスを測定します。
マイクロストリップラインの長さは 1/4 波長としたいので、
出力端をショート (インピーダンス 0 [Ω]) させると入力端はオープン (高インピーダンス) に見えるはずです。

少々雑ですが、アルミ箔を使ってマイクロストリップラインをショートさせ、
N 型レセプタクルの付いている入力端のインピーダンスを測りました。

20220424_0005

すると、Uバランの接続点から約 7 cm のところをショートさせると、
入力端が高インピーダンスになりました。

20220424_0007

 

ちなみに、これは NanoVNA に何も繋がなかったときのインピーダンスです。
(付属のケーブル+SMA-JーNP 変換コネクタを接続して、キャリブレーションを行っています)

20220424_0006

 


最後に、マイクロストリップラインの特性インピーダンスの調整です。

出力端に 50 [Ω] の負荷を付けます。
SMA-J コネクタに NanoVNA のキャリブレーション用負荷を取り付け、
リード線を使ってマイクロストリップラインに接続しました。

純抵抗負荷が望ましいのですが、ぴったりサイズが合う物が用意できません。
リード線の寄生リアクタンス分が影響する懸念がありますが、これで我慢しました。

20220424_0008

マイクロストリップラインの幅が 6mm 有り、設計値 5.5 mm に対して若干太めでした。
このため、特性インピーダンスが少し低めになっていたようで、
入力端のインピーダンスは 42 [Ω] 程度を示していました。

なので、マイクロストリップラインを 0.5 mm 程度カットしました。
間隔は変えたくなかったので、外側をカットすることにしました。

その後、若干 50 [Ω] 負荷の位置を調整し、6.4 cm の長さで下図のようにまあまあのところまで来ました。

20220424_0009

後は、アンテナに取り付けて、アンテナの調整をしたいと思います。

 


今回実験してみた感想ですが、
マイクロストリップラインの特性インピーダンスは計算値に近い値が出ているのが意外でした。
ただし、波長短縮率は計算値よりかなり低く、0.36〜0.4 程度になっているようでした。

今回の結果は、リピートする際のある程度の目安にはなると思います。
が、作りっぱなしではやはりダメで、一回一回調整は必要になってくるかと思います。

いずれにせよ、NanoVNA が無ければ、ここまではできなかったと思います。
今回作ったバランが、ゴミにならなくて済みそうなので、ホッとしています。

 

<関連記事>
430MHz帯用 50Ω:50Ω 強制バランの検討(その1)
430MHz帯用 50Ω:50Ω 強制バランの検討(その2)
430MHz帯用 50Ω:50Ω 強制バランの検討(その3)
430MHz帯用 50Ω:50Ω 強制バランを 7エレ 1λヘンテナに組み込み

2022年4月17日 (日)

430MHz帯用 50Ω:50Ω 強制バランの検討(その3)

なかなか捗らないですが、少しだけ進みました。

 

ようやく、マイクロストリップラインに N 型コネクタ (レセプタクル) を
固定する治具を作りました。
1 mm 厚の銅板を、写真の様な形に加工したものになります。

220417_0001

 

また、前回作ったマイクロストリップラインですが、
N 型レセプタクルの出っ張る部分が当たってしまうので、
写真のようにヤスリで削って加工しました。

220417_0002

二つの穴は、U バランで使う同軸ケーブルの芯線を通すためのものです。

 

ここまでできたところで、
マイクロストリップラインと N 型レセプタクルを接続しました。

表面です。
N 型レセプタクルの中心導体とマイクロストリップラインをハンダ付けしました。
銅板で作った固定治具は、N 型レセプタクルの裏側に装着し、ネジ止めしています。

220417_0003

こちらが裏面です。

固定治具は、ちょうどベタ GND とピッタリ接触するよう、L 型に折っています。
固定治具とベタ GND をハンダ付けして固定しました。
ついでに、固定治具と N 型レセプタクルとの間もハンダを盛りました。

裏面 (全面ベタGND) は、防錆のためソルダーレジストを塗布しました。
しかし、まだ調整が済んでいないので、一部分しか塗布していません。

220417_0004

これから調整作業に入っていきます。

 

<関連記事>
430MHz帯用 50Ω:50Ω 強制バランの検討(その1)
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430MHz帯用 50Ω:50Ω 強制バランを 7エレ 1λヘンテナに組み込み

2022年4月 3日 (日)

430MHz帯用 50Ω:50Ω 強制バランの検討(その2)

前回の記事で、Qマッチングには特性インピーダンスが 100 Ω の平衡型伝送線路を用いると書きました。
430MHz帯用 50Ω:50Ω 強制バランの検討(その1)

実現方法は幾つかあると思います。
例えば、Ethernet の LAN ケーブルなんかも、特性インピーダンスは 100 Ω 前後のようです。
https://www.systemgear.jp/kantsu/utpc5e.php
しかし今回は、プリント基板を使ったマイクロストリップラインで実現しようと考えています。

平行なマイクロストリップラインの特性インピーダンスは、ネットの情報を参考にします。
http://nahitafu.cocolog-nifty.com/nahitafu/2008/11/post-57a1.html
https://www.ritael.co.jp/archive/20060401a04/
https://www.wti.jp/contents/hint-plus/hint-plus074.htm
https://toragi.cqpub.co.jp/Portals/0/trcalc/trcalc.html?49

これらの情報から、伝送線路の幅を$W$、伝送線路間の距離を$S$、銅箔の厚みを$t$、基板の厚みを$H$、
基板の基材の比誘電率を$\varepsilon_{r}$とすると、
単線の特性インピーダンス$Z_{O}$は、$$Z_{O}=\frac{60}{\sqrt{0.475\varepsilon_{r}+0.67}}\times\log_{e}{\left\{\frac{4H}{0.67\times(0.8W+t)}\right\}}$$差動の特性インピーダンス$Z_{diff}$は、$$Z_{diff}=2Z_{O}\times\left(1-0.48e^{-0.96\times\frac{S}{H}} \right)$$波長短縮率$1/\sqrt{\varepsilon_{eff}}$は、$$\frac{1}{\sqrt{\varepsilon_{eff}}}=\frac{1}{\sqrt{\dfrac{\varepsilon_{r}+1}{2}+\dfrac{\varepsilon_{r}-1}{2\sqrt{1+10\times\dfrac{H}{W}}}}}$$

これらの式から、$Z_{diff}=100\Omega$ となるような組合せを見つけていきます。

伝送線路の幅 $W$ (基板の配線幅) はある程度太くしたいので、試行錯誤した結果、
$W=5.5mm$、$S=10mm$、$t=35\mu m$、$H=3.2mm$、$\varepsilon_{r}=4.7$で、
$$Z_{O}=51.4\Omega$$ $$Z_{diff}=100.4\Omega$$ $$\frac{1}{\sqrt{\varepsilon_{eff}}}=0.530$$($\varepsilon_{r}$は、ガラスエポキシ基板でよく言われている値 4.7を用いた)
を得ました。
実際の検討は、Excelに計算式を入力して、カットアンドトライしました。

 

市販のプリント基板は1.6mm厚のものが多く、3.2mm厚のプリント基板は手に入れにくいです。
そこで、2枚の片面基板を貼り合わせることにしました。
接着剤が比誘電率に大きく影響しないよう、基板の基材の成分に近そうなエポキシ系ボンドを用いることとしました。

それで作ってみたのが、このような物です。
写真には写っていませんが、裏面は銅箔ベタパターンになっています。
20220403_0001
パターンの形成は、エッチングではなく、カッターで銅箔をカットして不要な部分を剥がしました。
接着剤 (エポキシ系ボンド) は薄く均等に塗布したつもりですが、
結構気泡が残ってしまいました。

左側の部分にN型レセプタクルを付けることを考えていますので、
少し引き出し線があります (斜めに配線している部分)。
単線の特性インピーダンスも計算上 50 Ω に近いので、
この部分の影響は少ないものと考えています。

マイクロストリップラインの長さは、1/4波長 (波長短縮率込み) より長くしており、
調整の過程でカットして長さを詰めていく予定です。

 


ここまでは少し前に完成していたのですが、この先の作業が中々着手できません。

つづく

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