デジタルモード用インターフェース Ver.3 (絶縁型) の製作 (その2)
残りの部品も実装し、ようやく基板が組み上がりました。
基板が出来上がったところで、動作や特性の確認を行いました。
結論としては、当初の回路で取りあえず動作はして、そのままで FT8 での交信もできました。
◆◆ 基板の動作確認 ◆◆
① 回路電流
無負荷、通信信号無しの状態で実測し、217 mA でした。
IC のデータシートなどから計算した電流値は 244 mA ですので、まあ妥当な値だと思います。
また、RS-232 の負荷を接続したり、信号を通信したりしても、まず 500 mA を超えることは無いと思われます。
MAX3232 の TXD 出力電圧は、±6 V で、RS-232 の負荷抵抗 (規格の標準値) は 5 kΩですから、
RS-232 の負荷電流は、せいぜい 1 mA 強といったところだと思います。
なので、USB のバスパワーでも使用できそうですので、安心しました。
② 回路の主要箇所の電圧
電源電圧、バイアス電圧などは想定内の値であり、特に問題はありませんでした。
トランスのドライブを DC 直結することを検討するため、トランスの二次側の片端をバイアス電圧に切り替え、
C32 とC37 のそれぞれの両端の電圧 (下図) を測ってみたところ、どちらもほぼ 0 mV (0.1 mV 以下) でした。
したがって、C32 および C37 をショートして DC 直結しても、トランスに電流は流れません。
取りあえず、DC 直結するようにしました。
③ RS-232 通信
RIG (TS-590 および TS-2000) との接続確認を行い、通信できていることが確認できました。
HAMLOG での周波数取り込み、WSJT-X での CAT 制御が、問題なくできています。
④ PTT 制御
TS-590 および TS-2000 と WSJT-X との組合せで、PTT 制御ができていることを確認しました。
RTTY と CW は未確認ですが、PTT と回路構成が同じなので、恐らく問題ないものと考えています。
⑤ Audio 信号 (周波数スペクトル)
DIN コネクタの部分で入出力を短絡し、ループバック試験をしてみました。
ローパスフィルタの信号通過帯ゲインを 0.2 倍としていますので、この部分でオーディオ信号が 14 dB 減衰します。
ループバックで往復すれば 28 dB 減衰し、USB Audio コーデック IC に帰ってくる信号のレベルがかなり小さくなります。
WSJT-X でよく使う 1500 Hz の信号では、目立った高次歪み成分やノイズ成分などは見られませんでした。
1000 Hz でも特に問題はありません。
500 Hz では、僅かに歪み成分が見られますが、信号比で -70 dB 以下なので、まだ問題ないレベルかと思います。
250 Hz では、3次歪みが信号比 -60 dB くらいです。
100 Hz では、だいぶ歪み成分が大きくなり、3次歪みが信号比 -55 dB くらいです。
トランスで低周波を通すのはしんどいのかも知れません。
データ通信の副搬送波で、極端に低い周波数で送信しなければ、
恐らく問題はないのではないかと思います。
⑥Audio 信号 (オシロスコープ波形)
1 kHz の信号を出力し、その波形を測定してみました。
下の写真のように、かなりノイズが重畳した波形になっています。
試しに、GND の波形も見てみました。
555 kHz ぐらいの周期で、バースト状のノイズ信号が乗っています。
IC 内部の DC-DC コンバータのスイッチング周波数が 625 kHz なので、
おそらくこれが見えているものと思われます。
プローブの自分自身の GND 点をプローブを掴んで測定していますが、
どうもプローブが1ターンコイルとなって、ノイズを拾っているようです。
※オシロスコープの周波数表示はデタラメです。
横軸が 500 ns/div で、周期が 1800 ns 程度なので、周波数は約 555 kHz です。
波形を拡大してみると、350 MHz ぐらいの高周波ノイズのようです。
※オシロスコープの周波数表示はデタラメです。
横軸が 10 ns/div で、1目盛り当たり 3.5 サイクル程度の波形なので、周波数は約 350 MHz です。
これは、絶縁用 IC の ADuM5402 が発しているノイズと思われます。
この IC のノイズ輻射が大きいことは、予め承知していました。
メーカーの情報では、IC 内部で約 180 MHz のクロック信号を使っており、
その高調波ノイズが輻射され、特に2倍高調波である約 360 MHz の輻射が
一番強いようです。
なので、電源ラインや信号ラインにフェライトビーズや貫通コンデンサを挿入するなど、
ある程度ノイズ対策を施していたつもりです。
ただし、GND は特に対策はしていませんでした。
色々いじっていると、IC を実装している基板の裏あたりを指で触ると、
ノイズの量に変化が見られます。
そこで、以下のような仮説を考えてみました。
ADuM5402 の前後で絶縁しているため、当然 GND も分離されています。
IC 内部で生成された高周波ノイズが、コモンモードループ
GND1 → ・・・ → VDD1 → VISO → ・・・ → GNDISO
を形成しようとしますが、GND1 → GNDISO 間が分離されているため、
GND1 および GNDISO の銅箔パターンがダイポールのようなアンテナの働きをして、
ノイズを空間に輻射しているのではないかと。
なので、GND1 と GNDISO を高周波的に結合 (短絡) させれば、ノイズの低減が見込めます。
指で触ったのも、ちょうど GND1 と GNDISO の間の部分だったので、
指を介して GND1 と GNDISO が緩く結合したため、ノイズ量に変化が見られたと思います。
さて、どのように対策するか、少し考えました。
極力短いループでノイズをリターンさせないと効果がありません。
メーカーでは、4層以上の多層基板で VDD1、GND1、VISO、GNDISO の銅箔パターンを
重ねることにより、バイパスコンデンサを形成させることを推奨しているようですが、
2層基板ではそのようなことはできません。
そこで、IC の近くおよび基板の裏面に、GND1 と GNDISO の両方に掛かるような形で、
銅箔テープを貼ってみることにしました。
銅箔テープは、ダイソーを何軒か回り、何とか見つけることができました。
基板表面
基板裏面
ソルダーレジストの上からテープを貼っていますので、GND1 と GNDISO 間は導通していません。
絶縁耐圧も特に必要な訳ではありませんので、問題にはならないと思います。
結果は非常に良好でした。
1 kHz 正弦波の出力波形です。
ノイズがかなり軽減されています。
オシロスコープの輝度が高いので、波形の回りがノイズっぽく写っていますが、
実際はかなり綺麗なトレース曲線になっています。
GND のノイズ波形です。
625 kHz のバースト状ノイズも見えなくなっています。
今回、折角絶縁しているのに、高周波をバイパスさせる対策を取りました。
まあ、トランスによる絶縁も、高周波はスルーしているのではないかと思います。
なので、USB ケーブルやリグとの接続ケーブルにパッチンコアでも入れて、
高周波をカットするようにしたいと思います。
また、銅箔部分がフローティングのため、電位が不定です。
(高周波的には、中間電位になると思いますが)
GND1 か GNDISO のどちらかに接続した方が良いかも知れませんので、
今後の課題としたいと思います。
取りあえず、しばらくこれで様子を見ようと思います。
そこそこ上手くいきましたので、次は最後の仕上げをしていきたいと思います。
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コメント
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おめでとうございます。この基本機能Verがほしかったです。バスパワーの供給ケーブルは実に多くの製品がありますが性能はどうなんでしょうかね、気になります。
私はどの接続構成にしてもパソコンを更改したためか、いくつもの問題が解決できず、動作するRigを確認購入し現在に至っております。ある部分は実にもったいない利用となっています。
TS2000は135KHzから1.2GHzCWが主となっています。パソコンは友人と半年の製造月日が異なるのみで私のRigは動作しませんでした。パソコンなどに詳しい友人に色々とみてもらいましたが解決できませんでした。電子の世界は不思議です。私事で申し訳ありません。
投稿: 達五郎 | 2020年3月 9日 (月) 08時05分
達五郎さん、こんばんは。
バスパワーなので、PCからUSBケーブルを介して電源供給していますが、USB2.0以上の認証を謳っているメーカー製のケーブルであれば、問題ないのでは無いでしょうか。
どちらかというと、USBハブを多段で使う方が怪しいように思います。
私は、PCから直接USBケーブルで基板に接続しています。
リグとインターフェースの相性問題は、結構あるのですね。
私のところでは、これまでも特に問題になったことはなく、取りあえず順調に動いてくれています。
投稿: ji3csh | 2020年3月 9日 (月) 20時03分