M54821P を用いた5桁周波数カウンタの製作
この週末は無線をお休みして、久々に工作をしました。
今回作ってみたのは、周波数カウンタです。
今回用いた M54821P ですが、1970 年代後半の BCL ブーム時代に開発された古い IC で、
私も中学生時代にこの IC を使って周波数カウンタを作ったことがあります。
その後、もう一度作り直そうと思って IC を入手していたものの、そのまま忘れ去られてしまっていました。
先日整理していたらこの IC を見つけ、何か懐かしくなって周波数カウンタを作ってみようと思い立ちました。
◆◆ 回路 ◆◆
メインの周波数カウンタ IC は、M54821P です。
前段のプリスケーラとクロック生成回路は、M54408P を、LED のドライバは M54521P を使いました。
これらの IC を組み合わせるだけで、少ない外付け部品で簡単に周波数カウンタが構成できます。
水晶発振子の周波数は、10 MHz です。M54408P で 8 分周され、M54821P に 1.25 MHz のクロックを供給します。
あとは、入力部分の波形整形回路に、J-FET の MMBFJ310 と 74VHCU04 を使いました。
入力段のソースフォロワは MMBFJ310 ですが、2SK192A とかでも良いと思います。
74VHCU04 は、3倍増幅回路、ヒステリシス付きコンパレータ、ドライブ回路の三役を持たせています。
簡単な回路でできるだけ高い周波数まで動作させたいので、VHC シリーズの unbufferd inverter を選びました。
回路図は以下のとおりです。
設計は少し前に終わらせていました。
表示部には、Kingbright 社のカソードコモン 7セグ LED (緑色) を使いました。
SC43-136WR ですが、残念ながら現在ではもう廃版になっているようです。
◆◆ 基板作成と組み立て ◆◆
今回初めて、KiCAD (Ver. 5.1.4) を使って基板レイアウトを設計し、転写やエッチングをしてみました。
メインの基板は、両面配線の仕様です。
基板の穴開けが面倒くさいので、表面実装部品を多用しています (と言うほど多くないですが)。
先日記事を書いたとおり、Mac 版の KiCad ではランドバターンが上手く印刷されないようなので、
Mac 版で設計したデータを Windows 版にコピーして出力させました。
今回も、全ての基板はエッチングからソルダーレジスト加工まで全て自前の作業です。
スルーホール加工は面倒くさいので、抵抗やコンデンサのリード線の余りを使って、
表裏両面からハンダ付けしています。
IC のランド部分は、丸ピンタイプのソケットを使い、ソケットの横からも表面のハンダ付けをしています。
M54821P、M54408P、M54521P 以外の部品は、日本橋の千石とデジット/共立で買い求めました。
取りあえず動作確認するため、全体を接続したらこんな感じになりました。
当初 5 V の AC アダプタで動作させようと考えていましたが、手持ちがなかったため、
急遽三端子レギュレータ 7805 を使った電源回路も組みました。
メインの基板の出来上がりは、こんな感じです。
手作り感は否めませんが、まあまあ綺麗にできたかなと思っています。
◆◆ 動作確認 ◆◆
信号源として、アンテナアナライザの MFJ-259B を繋いでみました。
回路が簡単なので、特に問題もなく動作しました。
最初にクロック周波数の調整です。
M54408P の 5 pin (XO) から出力されるクロック信号が、1.25 MHz となるように、
水晶発振回路のトリマコンデンサを調整します。
本来であれば、構成済みの周波数カウンタなどで測定すべきですが、今回は簡易的に
オシロスコープの周波数表示で合わせました。
以下は 7.040 MHz の信号を入力したときの表示です。
無入力のときは、ゼロサプレス機能が働いて "0" と表示されますが、
デシマルポイントまでは消えませんので、イマイチに思います。
M54821P のモードを kHz 表示にした方が良さそうです。
どのくらい高い周波数まで測定できるか見てみたところ、70 MHz ぐらいまでは動作確認ができました。
データシートによると M54821P のカウント周波数の動作保証最大値が 1.6 MHzで、
M54408P が 32 分周回路、入力信号の最大繰り返し周波数が 50 MHz 以上となっていますので、
M54408P の入力換算では 1.6 MHz × 32 = 50 MHz がカウント周波数の動作保証最大となります。
それらのことを考えると、70 MHz は M54821P の限界まで動作させているのではないかと思います。
後日、別途そのあたりも見極めてみたいと思っています。
今やマイコンでもっと精度の良い周波数カウンタを作るのが当たり前の時代ですし、
5桁までの表示だとアマチュア無線レベルでも物足らないと思います。
オモチャ程度の周波数カウンタと割り切って、懐かしさを楽しんでみました。
ところで、中学生時代に作った周波数カウンタは、ラジオの製作 1977年8月号に掲載された
製作記事のものです。切り抜きが残っていました。
当時はこの記事を参考に作ってみましたが、記事の回路どおりでは上手く動かなかった記憶があります。
また、波形整形回路のゲインが高すぎて発振しており、信号を入力しているときは問題ないのですが、
無入力にすると、デタラメな周波数がパラパラと表示されてしまいます。
当時は原因が分からなかったのですが、後で発振が原因であることを知りました。
今回はその点も改善したく、新たに 74VHCU04 を使った回路で設計しました。
M54821P はラジオ用に開発された IC のようで、端子処理によるモード設定で、
455 kHz や 10.7 MHz の IF 周波数分だけ加減算することができます。
すなわち、局部発振器の周波数をカウントすることにより、受信周波数を直読できるという面白い IC です。
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