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2019年11月の6件の記事

2019年11月27日 (水)

WSJT-X 2.1.2 がリリース

WSJT-X がアップデートされ、ver 2.1.1 がリリースされたという情報を聞きつけたので、
早速アップデートしてみようと WSJT-X のページに行ってみたら、
emergency bug-fix とかで早々に WSJT-X 2.1.2 へ更にアップデートされていました。

取り急ぎ、ダウンロードしてインストールしてみました。
使用するのはこの週末までお預けです。

詳細な動作確認は、親切な何方かがレビューしてくださるでしょう。

2019年11月24日 (日)

サブ機の Macbook Pro を macOS Catalina にアップグレードしてみました

躊躇している macOS Catalina へのアップグレードですが、
メイン機に適用するのはまだ時期尚早かと考えているので、
まずは試しにサブ機の Macbook Pro で様子を見てみることにしました。

ダウンロード、およびアップデートは順調に進み、一時間ほどでアップグレードで完了しました。
ネット上では起動が遅いとか、動作が遅いとかの情報があるようですが、
私の Macbook Pro (Retina, 13-inch, Mid 2014) では特にそのようなことを感じることもなく、
アプリの起動もシャキシャキしたように感じました。

Adobe Photoshop CS5 や Illustrator CS5 は、予想どおり全く起動しません。
あと、ゴミのように残っていた使用していないアプリも動作しなくなりました。
起動しないアプリは、アイコンに下図のようなマークが入っているので、見ると区別が付きます。

20191124_0001 

年賀状作成用に宛名職人V21を使っており、バージョンアップ必要を覚悟していたのですが、
これが macOS Catalina で問題なく動作したのは意外でした。
macOS Catalina で動くソフトと動かないソフトがある程度分かって良かったです。

私のメイン機をアップグレードするには、あと Toast と Parallels Desktop を
バージョンアップする必要があります。
Safari でネットを見ていると、ページを開けられなかったり、まだ何か不安定な点は多々ありそうです。
まだまだバグもありそうですし、特に急いでアップグレードする必要がないので、
メイン機はもうしばらく Mojave で使い続けようかと考えています。

無線関係のソフトは、メイン機もサブ機も Bootcamp 上の Windows10 なので、
macOS Catalina へのアップグレード有無は影響を受けず、心配ないです。

2019年11月17日 (日)

久々に 50 MHz で QSO しました

タイトルのとおりですが、50 MHz で交信するのは 2018 年 7 月以来です。
アンテナが上手く動作するか心配でしたが、以前と変わりなく VSWR が 1.0 と良好でした。

すっかりオフシーズンになっており、聞こえてくるのはローカル局がメインです。
バンド全体が、しーんとしています。

それでも今日の午前中は FT8 の周波数帯が賑やかで、少しコンディションが良かったのか、
FT8 で 1 エリアと 2 局 QSO でき、比較的強くデコードできていました。
また一瞬ですが、6 エリア (福岡?) の局もデコードできました。

昨晩が 6 QSO、今日が 12 QSO と、まずまず楽しめました。

2019年11月15日 (金)

バッファゲートに正帰還を掛けたヒステリシスコンパレータについて (備忘録)

先週作製した周波数カウンタの入力回路 (波形整形回路) に、
74VHCU04 で構成したヒステリシスコンパレータを用いました。

そのヒステリシス電圧 (幅) の概算値見積もりについて、備忘録として残しておきたいと思います。

20191115_0001

バッファゲート (インバータ 2 段) の閾値を $V_{ TH } $、ヒステリシスコンパレータの入力立ち上がり時の閾値を $V_{ IH } $、
入力立ち下がり時の閾値を $V_{ IL } $、出力の 'H' 電圧を $V_{ OH } $、出力の 'L' 電圧を $V_{ OL } $ とすると、
入力信号の周期が、バッファゲート (インバータ 2 段) の伝搬遅延時間に対して充分長いときに、

①入力が 'L' のとき
$$V_{IL}+(V_{OH}-V_{IL})\times\frac{R_{i}}{R_{f}+R_{i}}=V_{IL}\times\frac{R_{f}}{R_{f}+R_{i}}+V_{OH}\times\frac{R_{i}}{R_{f}+R_{i}}=V_{TH}$$

②入力が 'H' のとき
$$V_{OL}+(V_{IH}-V_{OL})\times\frac{R_{f}}{R_{f}+R_{i}}=V_{OL}\times\frac{R_{i}}{R_{f}+R_{i}}+V_{IH}\times\frac{R_{f}}{R_{f}+R_{i}}=V_{TH}$$

$$\therefore V_{IL}\times\frac{R_{f}}{R_{f}+R_{i}}+V_{OH}\times\frac{R_{i}}{R_{f}+R_{i}}=V_{OL}\times\frac{R_{i}}{R_{f}+R_{i}}+V_{IH}\times\frac{R_{f}}{R_{f}+R_{i}}$$

$$V_{IL}\times{R_{f}}+V_{OH}\times{R_{i}}=V_{OL}\times{R_{i}}+V_{IH}\times{R_{f}}$$

$$(V_{IH}-V_{IL})\times{R_{f}}=(V_{OH}-V_{OL})\times{R_{i}}$$

よってヒステリシス電圧は、
$$V_{IH}-V_{IL}=\frac{R_{i}}{R_{f}}\times(V_{OH}-V_{OL})$$

ここで、$V_{OH}=V_{DD}$、$V_{OL}=0$ と考えても良いので、

$$V_{IH}-V_{IL}=\frac{R_{i}}{R_{f}}\times{V_{DD}}$$

すなわちヒステリシス電圧 (概算値) は、バッファゲート (インバータ 2 段) の $V_{ TH } $ に依存せず、
電源電圧 $V_{DD}$ と抵抗比 $R_{i}/R_{f}$ だけで決まるということになります。

2019年11月10日 (日)

M54821P を用いた5桁周波数カウンタの製作

この週末は無線をお休みして、久々に工作をしました。
今回作ってみたのは、周波数カウンタです。

今回用いた M54821P ですが、1970 年代後半の BCL ブーム時代に開発された古い IC で、
私も中学生時代にこの IC を使って周波数カウンタを作ったことがあります。
その後、もう一度作り直そうと思って IC を入手していたものの、そのまま忘れ去られてしまっていました。
先日整理していたらこの IC を見つけ、何か懐かしくなって周波数カウンタを作ってみようと思い立ちました。

 


◆◆ 回路 ◆◆
メインの周波数カウンタ IC は、M54821P です。
前段のプリスケーラとクロック生成回路は、M54408P を、LED のドライバは M54521P を使いました。
これらの IC を組み合わせるだけで、少ない外付け部品で簡単に周波数カウンタが構成できます。
水晶発振子の周波数は、10 MHz です。M54408P で 8 分周され、M54821P に 1.25 MHz のクロックを供給します。

あとは、入力部分の波形整形回路に、J-FET の MMBFJ310 と 74VHCU04 を使いました。
入力段のソースフォロワは MMBFJ310 ですが、2SK192A とかでも良いと思います。
74VHCU04 は、3倍増幅回路、ヒステリシス付きコンパレータ、ドライブ回路の三役を持たせています。
簡単な回路でできるだけ高い周波数まで動作させたいので、VHC シリーズの unbufferd inverter を選びました。

回路図は以下のとおりです。
設計は少し前に終わらせていました。
20191110_0001

表示部には、Kingbright 社のカソードコモン 7セグ LED (緑色) を使いました。
SC43-136WR ですが、残念ながら現在ではもう廃版になっているようです。
20191110_0002

 


◆◆ 基板作成と組み立て ◆◆
今回初めて、KiCAD (Ver. 5.1.4) を使って基板レイアウトを設計し、転写やエッチングをしてみました。
20191110_0003

メインの基板は、両面配線の仕様です。
基板の穴開けが面倒くさいので、表面実装部品を多用しています (と言うほど多くないですが)。

先日記事を書いたとおり、Mac 版の KiCad ではランドバターンが上手く印刷されないようなので、
Mac 版で設計したデータを Windows 版にコピーして出力させました。

今回も、全ての基板はエッチングからソルダーレジスト加工まで全て自前の作業です。
スルーホール加工は面倒くさいので、抵抗やコンデンサのリード線の余りを使って、
表裏両面からハンダ付けしています。
IC のランド部分は、丸ピンタイプのソケットを使い、ソケットの横からも表面のハンダ付けをしています。
M54821P、M54408P、M54521P 以外の部品は、日本橋の千石とデジット/共立で買い求めました。

取りあえず動作確認するため、全体を接続したらこんな感じになりました。
20191110_0004

当初 5 V の AC アダプタで動作させようと考えていましたが、手持ちがなかったため、
急遽三端子レギュレータ 7805 を使った電源回路も組みました。

メインの基板の出来上がりは、こんな感じです。
手作り感は否めませんが、まあまあ綺麗にできたかなと思っています。
20191110_0005

 


◆◆ 動作確認 ◆◆
信号源として、アンテナアナライザの MFJ-259B を繋いでみました。
回路が簡単なので、特に問題もなく動作しました。

最初にクロック周波数の調整です。
M54408P の 5 pin (XO) から出力されるクロック信号が、1.25 MHz となるように、
水晶発振回路のトリマコンデンサを調整します。
本来であれば、構成済みの周波数カウンタなどで測定すべきですが、今回は簡易的に
オシロスコープの周波数表示で合わせました。


以下は 7.040 MHz の信号を入力したときの表示です。
20191110_0006

無入力のときは、ゼロサプレス機能が働いて "0" と表示されますが、
デシマルポイントまでは消えませんので、イマイチに思います。
M54821P のモードを kHz 表示にした方が良さそうです。

どのくらい高い周波数まで測定できるか見てみたところ、70 MHz ぐらいまでは動作確認ができました。
20191110_0007

データシートによると M54821P のカウント周波数の動作保証最大値が 1.6 MHzで、
M54408P が 32 分周回路、入力信号の最大繰り返し周波数が 50 MHz 以上となっていますので、
M54408P の入力換算では 1.6 MHz × 32 = 50 MHz がカウント周波数の動作保証最大となります。
それらのことを考えると、70 MHz は M54821P の限界まで動作させているのではないかと思います。
後日、別途そのあたりも見極めてみたいと思っています。

 


今やマイコンでもっと精度の良い周波数カウンタを作るのが当たり前の時代ですし、
5桁までの表示だとアマチュア無線レベルでも物足らないと思います。
オモチャ程度の周波数カウンタと割り切って、懐かしさを楽しんでみました。

ところで、中学生時代に作った周波数カウンタは、ラジオの製作 1977年8月号に掲載された
製作記事のものです。切り抜きが残っていました。

20191110_0008

当時はこの記事を参考に作ってみましたが、記事の回路どおりでは上手く動かなかった記憶があります。
また、波形整形回路のゲインが高すぎて発振しており、信号を入力しているときは問題ないのですが、
無入力にすると、デタラメな周波数がパラパラと表示されてしまいます。
当時は原因が分からなかったのですが、後で発振が原因であることを知りました。
今回はその点も改善したく、新たに 74VHCU04 を使った回路で設計しました。

M54821P はラジオ用に開発された IC のようで、端子処理によるモード設定で、
455 kHz や 10.7 MHz の IF 周波数分だけ加減算することができます。
すなわち、局部発振器の周波数をカウントすることにより、受信周波数を直読できるという面白い IC です。

2019年11月 6日 (水)

副搬送波を用いた変調方式の電波型式の表記について

一連の電波型式の表記に関する議論については、その後も JL3MCM 局と何度かやり取りさせていただき、
ようやく自分なりに理解ができたつもりになりました。

またかと思われるかもしれませんが、自分のために過去の記事の整理として残しておきたいと思います。
あくまでも、現時点で私自身が認識している内容です。
間違いや追加事項などがあれば、随時修正していきます。

 


◆◆ 電波型式の基本的な表記ルール ◆◆

電波型式の表記に関するルールは、再三述べているとおり電波法施行規則 第四条の二に記載があります。

第一文字:主搬送波の変調の型式(アマチュア局に馴染みのある主なものを抜粋)
 N:無変調
 A:振幅変調の両側波帯
 H:振幅変調の全搬送波による単側波帯
 R:振幅変調の低減搬送波による単側波帯
 J:振幅変調の抑圧搬送波による単側波帯
 F:角度変調の周波数変調
 G:角度変調の位相変調
 D:同時に、又は一定の順序で振幅変調及び角度変調を行うもの
 X:その他のもの

第二文字:主搬送波を変調する信号の性質
 0:変調信号のないもの
 1:デイジタル信号である単一チヤネルのもので変調のための副搬送波を使用しないもの
 2:デイジタル信号である単一チヤネルのもので変調のための副搬送波を使用するもの
 3:アナログ信号である単一チヤネルのもの
 7:デイジタル信号である二以上のチヤネルのもの
 8:アナログ信号である二以上のチヤネルのもの
 9:デイジタル信号の一又は二以上のチヤネルとアナログ信号の一又は二以上のチヤネルを複合したもの
 X:その他のもの

第三文字:伝送情報の型式
 N:無情報
 A:電信の聴覚受信を目的とするもの
 B:電信の自動受信を目的とするもの
 C:フアクシミリ
 D:データ伝送、遠隔測定又は遠隔指令
 E:電話 (音響の放送を含む。)
 F:テレビジヨン (映像に限る。)
 W:AからFまでの型式の組合せのもの
 X:その他のもの

第一文字の「主搬送波の変調の型式」については、アマチュア局の場合、
無線機の送信モード(SSB、AM、FM など)と理解すればよいと思います。
上記のように定義されていますので、それに当てはめてそれぞれの電波型式の表記を考えればよいだけのはずです。

しかし、日本のアマチュア局の電波型式については「等価表記」なるものが存在し、
現状ではこの「等価表記」を使用することが前提となっているようです。
この「等価表記」の存在が、昨今急速に普及してきたデータ通信モードにおける電波型式の表記で
混乱や誤解を招いているものと思われます。
「等価表記」については後述します。

 


◆◆ 等価表記を考慮しない本来の電波型式の表記 ◆◆

まず、等価表記を考慮しない場合について考えます。
前述のとおり、電波法施行規則に当てはめればよいだけなので、考え方はシンプルになります。
一般的な電話 (J3E, F3E など) や電信 (A1A) などは、既に広く理解されている型式です。

誤解が多いのではないかと思われるのは、最近流行りのデータ通信モードや AFSK 方式の RTTY、SSTV など、
データで変調された副搬送波を主搬送波に乗せて送信する場合です。
これらの信号は、副搬送波を用いますので、表記の第二文字は0や1にはなり得ません。
単一チャネルの場合は2か3、複数チャネルの場合は7、8、9になります。

例えば、JT65 や FT8 のように、単一チャネルのデジタルデータ信号で周波数変調された副搬送波を
AM モード (振幅変調の両側波帯) で送信する場合は A2D、FM モード (角度変調の周波数変調) で
送信する場合は F2D になります。
最も一般的な SSB モード (振幅変調の抑圧搬送波による単側波帯) で送信するときはどうなるかというと、
それは J2D と表記されることになります。→[余談1]

また、先日の記事で議論になった FT8 の Fox 信号ですが、複数の副搬送波を用いた複数チャネルのデジタル
データ信号と考えられますので、上記の規則に当てはめると、副搬送波を AM モードで送信する場合は A7D、
FM モードで送信する場合は F7D、SSB モードで送信するときは J7D となります。→[余談2]

同様に考えて、変調された副搬送波を用いる AFSK 方式の RTTY、SSTV、ファクシミリなどは、
AM モード / FM モード / SSB モードで送信するとそれぞれ、
 A2B / F2B / J2B、A3F / F3F / J3F、A3C / F3C /J3C
となることは明らかです。

後述の「等価表記」の存在と直感的なイメージから、特に J2B, J2D, J3C などの表記に対して
非常に違和感を覚える方が大半だと思いますが、表記の規則からするとそのようになります。
くどいですが、あくまでも主搬送波は「振幅変調の抑圧搬送波による単側波帯」で
それを変調しているものが副搬送波だからです。

以上のように、「等価表記」を考慮しない場合は、これまでの常識から考えるとかなり違和感がありますが、
非常にシンプルに表記を考えることができます。

私はその考えに則り、総通のご担当者より「等価表記で」とご指導を受けていたところを、
敢えて J2A、J2B、J2C、J2D、J2E、J3C で指定を受けました。

ただし、現状のバンドプランが「等価表記」を前提に策定されているため、
例えば J2B や J2D で指定を受けたとしても、運用できる周波数範囲が「全ての電波の型式」に限られるので、
JT65 や FT8 で通常使用されている周波数で電波を発射できないという、思わぬ落とし穴があるので注意が必要です。
現状では、「等価表記」が可能であれば、そちらを優先させる方が得策かと思います。

 


◆◆ アマチュア局では一般的となっている等価表記 ◆◆

次に「等価表記」についてです。
「等価表記」については慣例的なものと思っていましたが、きちんと審査基準に記載があることを教えていただき、
その内容を初めて知りました。

リンク先に情報が纏まって掲載されており、その電波法関係審査基準の中で、
 [別表1]の[2]の項の[別表] 地域周波数利用計画策定一覧表 第15号 アマチュア局
の備考1に明記されています。文面は以下のとおりです。

主搬送波を周波数変調又は位相変調した単一の副搬送波で振幅変調(抑圧搬送波単測波帯の場合に限る。)
することにより等価的に周波数変調波又は位相変調波を得る場合は、
主搬送波の変調の型式を周波数変調又は位相変調とする。

この審査基準の記載に従えば、以下のように「等価表記」されることになり、
一般的に認識されている電波型式になります。

 J2B → F1B, G1B
 J2D → F1D, G1D
 J3F → F3F
 J3C → F3C

SSB モードで送信した場合、副搬送波の信号がそのまま送信周波数帯に周波数変換され、
主搬送波を周波数変調や位相変調した信号とほぼ同じになるので、
例えば J2D と F1D が等価であるという「等価表記」についても理解はできます。→[余談7]

しかし、この審査基準は上記のとおり「単一の副搬送波」が前提なので、
例えば FT8 Fox 信号のような複数の副搬送波を用いる FDM の場合には「等価表記」の定義には当てはまらず、
前述の「等価表記」を用いない J7D と表記するのが妥当と考えます。

同様に、デジタル SSTV の Easy Pal やデジタル音声の FreeDV なども、
複数の変調された副搬送波を用いる FDM なので、SSB モードで送信した場合でも
「等価表記」には当てはまりません。
SSB で送信する場合の FreeDV は一般的には G1E や G7W とされているようで、
総通でもそのように認識し判断されているように見受けられますが、
実はそうでは無く「等価表記」を用いない J2E や J7W とすべきです。
また、Easy Pal も一般的には F1D とされているようですが、これも J2D になります。→[余談3]
既に G1E や G7W、F1D として広まってしまっているので、今さら何を言うんだと
あちこちから猛反発やお叱りを受けそうですが...

このように「等価表記」があるがために、副搬送波が単一か複数かで、例えば F1D か J7D のように
第一文字が変わってしまうケースがあり、混乱や誤解を与える原因になっているように思われます。
「等価表記」をしなければ、J2D か J7D の第二文字のみの違いとなるので、大変分かりやすいと思います。

また、上記の審査基準が広く知られている訳では無さそうなので、余計に独自の解釈も相まって、
色々な情報が錯そうしている状態になっているのではないかと推測します。

ベースバンドの信号で直接的に振幅変調や周波数変調を行う場合は、
何も悩まずに A1A (CW)、F1B (RTTY)、F1D (パケット通信など) と表記することができます。

 

なお、(あまり流行らなかった) 静止画テレビ電話の信号 (旧表記 A5J、振幅位相変調された副搬送波を使用)
については、D3F ではなく J3F になるとされています。
上記の審査基準により「等価表記」が当てはまらないことが判り、長年の疑問が解けました。
「等価表記」の前提が周波数変調又は位相変調であり、振幅変調や振幅位相変調は対象でないからです。
→[余談4]

Hellschreiber も振幅変調された副搬送波を用いるので、上記の審査基準には当てはまりません。
500H A1B で指定を受けられている方もおられるとは思いますが、これは 500H J2B となるべきです。

 


◆◆ 占有周波数帯幅 ◆◆

最後に、占有周波数帯幅についてです。発射する電波の占有周波数帯幅が、周波数帯や電波型式で定められている条件に適合するかどうか、
信号の仕様から見積もる必要があります。
また、個別に指定を受ける電波型式には、占有周波数帯幅を付することが必要な場合もあります。

占有周波数帯幅の計算式は、
 無線設備規則別表第二号(第6条関係)
 ITU-R SM.328, Annex 3 の (11) や Annex 4 など
で規定されています。

また、FSK については、以前私自身も調べて記事を書きました。
変調された副搬送波の占有周波数帯幅も、これらの計算式によって求めることになります。

ここで、変調された副搬送波を SSB モードで送信する場合は、
その副搬送波がそのまま送信周波数に周波数変換される形になりますので、
(電波の占有周波数帯幅) ≒ (副搬送波の占有周波数帯幅) と考えてよいものと思います。
ですので、例えば FT8 の信号 (占有周波数帯幅が 50 Hz) を SSB モードで送信した場合は、
電波の占有周波数帯幅も 50 Hz として良いはずです。→[余談5]
もちろん過大入力などによる歪みなど、信号品質の劣化が無いことが前提です。

誤解が多いと思われるのは、AM モードや FM モードで送信する場合です。
AM モードの場合、(電波の占有周波数帯幅) = 2 × (副搬送波の占有周波数帯幅) ではありません。
FM モードの場合も、電波の占有周波数帯幅を副搬送波の占有周波数帯幅だけで見積もることはできません。
これらの場合は、副搬送波の最高周波数を基に占有周波数帯幅を見積もるべきと考えます。
無線設備規則に記載の占有周波数帯幅の計算式でも、最高周波数で求めることになっています。

FT8 の信号を例に取って考えますと (FT8 の信号を AM モードや FM モードで送信することはまず無いでしょうが)、
AM モードで送信する場合、電波の占有周波数帯幅は 2 × 50 Hz = 100 Hz とはなりません。

WSJT-X などのソフトでは、副搬送波の周波数を変えることができます。
附属装置の諸元にも、副搬送波の周波数範囲は可変しており、そのような諸元の記載で書かれている方が
多いのではないかと思います。
例えば副搬送波の範囲を 
300 ~ 2800 Hz としているとすると、
副搬送波の最高周波数は、周波数偏移および変調による帯域の広がりを考慮して、
2800 Hz + 50 Hz = 2850 Hz になります。
したがって、FT8 を AM モードで送信する A2D の占有周波数帯幅は、
2 × 2850 = 5700 Hz (5K70) にすべきです (下図のとおり)。

20191106_0001a

また、FT8 を FM モードで送信する F2D の占有周波数帯幅は、
周波数偏移が 
5 kHz のノーマルモードだと、カーソン則に当てはめ
2 × 2850 Hz + 2 × 5 kHz = 15.7 kHz (15K7) になるでしょう。

実際には、無線設備規則 別表第二号(第6条関係) 表1に、
特にアマチュア局に関しては、平成21年03月17日 総務省告示第125号の
無線設備規則別表第二号第54の規定に基づくアマチュア局の無線設備の占有周波数帯幅の許容値
の1に
占有周波数帯幅の許容値が定められていますので、注意が必要です。
アマチュア局の A2D は占有周波数帯幅の許容値が 2.5 kHz ですので、
24 MHz 帯以下の5K70 A2D は NG です。 

 


長くなりましたが、以上が色々と失敗を重ね、各 OM からアドバイスをいただいた結果、
自分なりに整理ができたと考えている内容です。

またコメントいただいていましたが、「等価表記」をやめて、
かつ J2B、J2D など第一文字が J の主要な表記を一括表記に含めるよう、
法令・規則・バンドプランを改定されるのが望ましいと考えます。
が、「等価表記」が前提の表記法が広く深く浸透してしまっている以上、
一筋縄では行かないとは予想されます。

受信端では「J2B と F1B」や「J2D と F1D」などは区別が付かないですし、
別にどちらであっても問題ないことだと思います。
ただ、送信する側としては、自局の無線局の工事設計書を
「SSB送信機に、附属装置から副搬送波を入力して送信する」
としている以上、自局の無線局免許に指定される電波の型式は J2B や J2D などに
すべきではないかと私は考えます。
「等価表記」だと、工事設計書の内容に矛盾が生じると感じます。

最後に、色々とコメントやアドバイスをいただいた JL3MCM 局にお礼申し上げたいと思います。

 


◆◆ 余談  ◆◆

[余談1]
SSTV (副搬送波 FM 方式) の信号を AM モードで送信する場合、最終的な信号の振幅にデータの情報が無いから
A3F ではなく F3F という議論が以前よりあったようですが (過去の記事でも書きましたが)、
上記より A3F であることは明らかだと考えます。
また、周波数スペクトルで考えても、周波数変調信号ではないことが分かると思います。

[余談2]
SSB モードで送信した Fox 信号は F7D という意見があり、私も当初はそのように考えていましたが、
仮に「等価表記」が適用できるとしても、現在ではそれは間違いと考えています。

20191106_0002a
ただし、FM モードで送信した Fox 信号は、F7D です。

[余談3]
データ多重信号でも、単一キャリアの TDM 方式であれば等価表記の対象に該当し、
SSB モードで送信すると F7D になるのかなと考えます。

[余談4]
以前、副搬送波を用いて、等価的に全搬送波による単側波帯や低減搬送波による単側波帯などの電波を得ることで、
例えば H2B や R2B などの型式の指定を受けておりましたが、
上記の審査基準からすると誤りであることが分かりました。
先日の変更申請で既に削除済みです。

[余談5]
何回か記事で書いていますが、FSK の周波数偏移 (幅) と占有周波数帯幅を混同しているケースが、
まだ時々見受けられるように思います。

[余談6]
JT65 や FT8 などのデータ通信信号を、LSB モードで送信した場合、
秘匿性に引っかかるかどうかを総通のご担当者に尋ねたことがあります。
LSB モードで送信すると、周波数や位相が反転した信号の電波になり、
通常 USB モードで運用している局はデコードできないはずです。
例えばグループ内で示し合わせて LSB モードで交信するようなことをすれば、
秘匿性に抵触する可能性はあるとのことです。
ただ、そのようなモードが例えば FT8 reverse とかいう名前などで一般的になってくれば、
当然ですが問題ないようです。

[余談7]
J2D と F1D は厳密には異なり、例えばキャリアポイントの位置が異なると思います。
 J2D のキャリアポイントは、抑圧搬送波の周波数
 F1D のキャリアポイントは、無変調時の送信周波数

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