■■■ 2018/11/18 追記 ■■■
WSJT-X 2.0 でプロトコルが変わった新しい 77 bit メッセージの FT8 は、
従来の 75 bit メッセージの FT8 と比較して、通信速度、周波数偏移、デュレーションは変わらず、
メッセージ長と CRC が増えた分は、エラー補正を LDPC (174, 87) → LDPC (174, 91) とすることで
吸収しているであろういうことが分かりました。
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WSJT-X 2.0-rc1 で、従来の FT8 とは異なるプロトコルの新しい FT8 が追加されました。
残念ながら、新しい FT8 は従来のものと互換が無く、互いに通信することができません。
rc3以降は、従来の FT8 の機能は廃止となりますので、先々は新しい FT8 が主流になるものと思われます。
通信データのプロトコルが変更になっているとのことで、総通に提出している附属装置の諸元
(デジタルモードの信号の仕様) も変更する必要が出てくる可能性が考えられます。
WSJT-X 2.0-rc1 に関する情報は、WSJT-X のホームページに、
New Features in WSJT-X 2.0 やQuick-Start Guide to WSJT-X 2.0
などの情報が掲載されていますが、プロトコルの変更内容の記載はあるものの、
最終的なデータ信号の仕様についての記載が無く、諸元として書くための情報が簡単に得られません。
であれば、ある程度計算の上で推測するしかありません。
※以下はあくまでも私見であり、内容が正しいこととは限りません (間違いの可能性大です)。
また、この内容などを使用されたことにより発生した損害等について、その責任を負いかねますので
ご了承願います。
新しい FT8 では、情報のペイロードが 77 bit、CRCが 14 bit となっています。
(従来の FT8 は、それぞれ 75 bit、12 bit です)
すなわち、1回の通信で送信するデータの量が増えています。
ということは、
①通信速度 (ボーレート) が早くなる
②通信時間 (デュレーション) が長くなる
③データを圧縮する
のいずれか、もしくはそれらの組み合わせという変更が加えられている可能性が考えられます。
①の通信速度ですが、従来の FT8 は 6.25 ボーで、トーン間隔と同じ値となっています。
実際に従来および新しい FT8 の信号を、Wavespectra で見てみました。
上が従来の FT8 (2018年3月11日の記事のデータ)、下が新しい FT8 です。


新しい FT8 は上手くピーク波形が取れませんでしたが、Tone 1 と Tone 8、そして Tone 5 あたりをみると、
従来の FT8 と周波数の位置が変わっていませんので、恐らくトーン間隔は同じだと思われます。
また、周波数帯域もほとんど同じのように見えますので、ボーレートも変わらず 6.25 ボー ではないかと思われます。
すなわち、①の通信速度は新旧で変わっていないのではないかと思います。
ここまでは、想定どおりでした。
次に②のデュレーションですが、WSJT-X の Fast Graph で比較してみました。
上が従来の FT8 で、下が新しい FT8 です。


デュレーションも、新旧で変わっていないように思われます。
最初は②のデュレーションが変わったものと考えていましたが、見事に予想が外れてしまいました。
以下、最初に考えていた内容です。
情報のペイロードが 77 bit、CRCが 14 bit なので、データ長は 77 + 14 = 91 bit となります。
これにエラー補正の処理を加わるはずですが、それは LDPC (182, 91) になるのではないかと
考えていました。
仮にそうだとすると、182 bit のデータを 8トーン (2^3) で送るので、データの長さは 182 / 3 = 61 bit
(小数点切り上げ) となり、あとはデータの最初、中間、最後に 7 bit ずつの同期信号が挿入されて、
総データ長は 61 + 7 * 3 = 82 bit になるはずです。
82 bit のデータを6.25ボーで送信すると、デュレーションは13.12秒となります。
しかし実際は、先ほどの結果から、デュレーションは 12.64秒のままのようです。
そうすると、③のデータを圧縮したのではないかと考えられます。
LDPC のエラー補正を加えたときのデータが 182 bit ではなく 174 bit であるか、
同期信号を 1 bit ずつ削って 6 bit x 3 にしたかなどが考えられますが、調べようがありません。
いずれは、User Guide に記載されるものと期待しています。
詳細が分かるまで変更申請 (届) ができないかどうかですが、恐らく諸元に記載されている
数値などに変更は無いと思われますし、符号構成も WSJT, FT8 と書いていますので、
そのまま変更無しでも問題ないのではないかと思っています。
■■■ 2018/11/18 追記 ■■■
エラー補正が LDPC (174, 91) ということで間違いなさそうです。
WSJT-X 2.0.0-rc4 のソースコードをダウンロードし、中を見てみました。
ソフトウェアの部分はよく分かりませんが、FT8 というフォルダの中に、
LDPC (174, 91) というキーワードの名前が入ったファイルを見つけました。

これでスッキリしました。
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