ヘッドホンのインピーダンスとリグ接続時の影響について
先日買った、ゼンハイザーのヘッドホン HD206 を TS-590S に繋いで聞いてみました。
先代のパイオニア SE-M380J と比べて HD206 は落ち着いた大人しい感じで聞こえますので、
了解度は若干劣るのかもしれません。もう少し使い込んでから見極めたいと思います。
それよりも、同じ AF ボリューム位置で比べて、やはり HD206 の音量が小さいことが気になります。
ヘッドホンのインピーダンス、音圧レベルのカタログスペック値を比べてみると、
HD206 : インピーダンス 24Ω, 音圧レベル 108 dB
SE-M380J : インピーダンス 32Ω, 音圧レベル 105 dB
となります。
アンプの出力インピーダンスが充分低く、ドライブ能力もある場合は、
ヘッドホンのインピーダンスが小さいほど、音量は大きくなるようなので、
スペック的には HD206 のほうが有利に思えます。
また音圧レベルも HD206 の方が 3dB ほど高いので、HD206 の音量が小さくなる要因は見当たりません。
不思議に思ったので、ネットで拾ってきた TS-590 のサービスマニュアルで回路図を調べてみました。
ちょっと端折って書いていますが、下図のような構成になっています。
ヘッドホンの信号はスピーカーと共通で、L と R に分配後、直列に 120Ωの抵抗を入れて分圧し
信号レベルを合わせているようです。
すなわち、TS-590 のヘッドホン端子の出力インピーダンスは、120Ωに見えています。
※サービスマニュアルの回路図では、片側のコンデンサが抵抗のアンプ側に接続されていますが、
これは間違いだと思います。基板のパターン図から追いかけると、上図のとおりです。
ヘッドホンを駆動するには、ヘッドホンに電力を供給しなければなりません。
※ヘッドホンに掛かる電圧だけが必要なのでは無く、コイルを駆動させる電流が重要です。
ヘッドホン端子の出力インピーダンスが 120 Ωでは、最大電力が得られるヘッドホンのインピーダンスは
120Ωだと思います。これは、インピーダンスマッチングの考えと同じです。
このとき、ヘッドホンのインピーダンスが120Ωより小さい場合、インピーダンスが小さければ小さいほど
ヘッドホンに得られる電力が小さくなってしまいます。
なので、インピーダンスが24Ωの HD206 の方が音量が小さいのも理解できます。
TS-590 の取扱説明書では、ヘッドホン端子の仕様は 4〜32 Ω (標準 8Ω) となっています。
とてもじゃないけど、4 Ωや 8 Ωのヘッドホンでは充分な音量が得られるとは思い難いです。
アンプの出力インピーダンスが充分に低い場合、例えば 1Ωだったとすれば、
計算上は ヘッドホンのインピーダンスが 1Ωのときに最大出力が得られるはずです。
なので、一般的にヘッドホンのインピーダンスが小さいほど、音量は大きくなると言われているのだと思います。
ヘッドホンのインピーダンスは一定ではなく、周波数によって変化するようです。
大体において、周波数が高くなればインピーダンスも高くなるようです。
周波数が高くなると、ヘッドホンのコイルに流れる電流が小さくなるからだと思います。
上記の考察からすると、ヘッドホン端子の出力インピーダンスが 120Ωだったとすると、
周波数が高くなればヘッドホンのインピーダンスが高くなり 120Ωに近づいていくので、
音量が大きくなるように考えられます。つまり高域が強調された音になる可能性があります。
2 µF のコンデンサが付いているのは、それを補正するためのローパスフィルタ用ではないかと推察します。
ところで、他のリグはどうなっているか、少しだけ調べてみました。
手持ちの TS-2000SX では、TS-590 に準じた回路でした。
ヤエスの FT-DX3000 も、コンデンサは無かったものの同じような構成で、100Ωの抵抗が直列に入っていました。
FT-DX5000 はさすが高級機です。ヘッドホン専用のアンプを設けているようです。
では、どうするのが良いかと考えましたが、ヘッドホンアンプを外付けすることが良さそうです。
電流駆動型アンプ、もしくは電流帰還型アンプだとインピーダンスの影響を受けにくそうです。
時間を見つけて、自作してみたいと思っています。
最近のコメント