以前に秋月で衝動買いした 3SK294 を活用しようと思い立ち、
今回これを使って 144 MHz 帯用のプリアンプを作ってみました。
◆製作の経緯◆
V/UHF 用のプリアンプは、GaAs FET が用いられることが多いので、
シリコンの MOS FET では特性がイマイチなのではないかと思っていました。
手持ちのデュアルゲート MOS FET 3SK294 が有るのを思い出し、
データシートを見ていると、用途がTV チューナや VHF 高周波増幅であり、
かつ特長として
・混変調特性が非常に良い
・帰還容量が小さい
・低雑音 (NF = 1.4 dB)
とのことで、144 MHz 帯用のプリアンプとして使えるのではないかと考えました。
そこで、GaAs FET の 3SK241 との比較をしてみると面白いのではと思い、
3SK294 のプリアンプも作ってみることにしました。
◆回路◆
3SK241 との比較なので、回路構成は前回作製のものと同じとします。
特に入力マッチング回路、出力マッチング回路はそのままの流用です。
すなわち、FET の入力インピーダンスは 3 kΩ、負荷抵抗は 538 Ωとなります。
バイアス回路ですが、データシートを見ると Id =10 mA 程度で設計するのが
良さそうな感じです。
Vds の耐圧が高くないので、Vds = 5 V としました。
3SK294 はエンハンスメント型なので、ゲート1にも正のバイアス電圧を
与える必要があります。
データシートを見ながら、Id = 10 mA 程度になるゲート電圧として、
Vds1 = 1.5 V、Vds2 = 3.5 V としてみました。
自己バイアス回路ではないので、ソース抵抗は無くても良いのですが、
バイアスの安定化を図るため、100 Ωを入れることにしました。
ソース電位が 1 V となりますので、その分ゲート1、ゲート2、ドレインに印加する
電圧を、それぞれ 1 V ずつ嵩上げしました。
よって、電源電圧は 6 V となります。
最終的な回路としては、このようになりました。

◆プリアンプ基板の作製◆
ガラスエポキシの片面基板をエッチングしてプリント基板を作りました。
前回同様に、銅箔面へソルダーレジストを塗布しました。
前々回作った試作品②をバラし、ほとんどの部品を流用しました。


3SK294 のパッケージは 3SK241 よりさらに小さく、扱いが結構大変です。
◆調整および特性◆
バイアス電圧、およびドレイン電流は、データシートどおりの結果が得られました。
ソース抵抗 100 Ωでソース電位が 1.00 V、バッチリです。
調整は、トラッキングジェネレータ付きのスペアナを使って行いました。
波形のピークが 144.2 MHz 付近へくるように、入力側コイルと出力側コイルのコアを、
それぞれ回すだけです。
何故か前回作製したプリアンプよりも、さらに Q が低くなっています。

◆使用感◆
調整が終わったところで、TS-2000SX と 5 エレ八木に繋いで実際の信号で確認してみました。
ゲインは前回作製した 3SK241 のプリアンプより、若干 (数 dB ぐらい?) 低いです。
ただ、NF は 3SK241 より良いように感じました。
TS-2000SX 内蔵のプリアンプが ON の状態で、今回作製した 3SK294 のプリアンプを
入れても (すなわちプリアンプが二段で入っている状態でも)、ノイズレベルも一緒に大きくなりますが、
弱い信号もしっかり増幅されるので、あまり S/N が悪化している感じがしませんでした。
前回作製した 3SK241 のプリアンプでは、TS-2000SX 内蔵のプリアンプも ON にすると、
かなりノイズレベルが大きくなり。S/N が悪くなる感じでした。
ということで、今回作製した 3SK294 のプリアンプは、良い結果が得られ満足です。
秋月で 1個 23 円の FET ですが、特性はなかなか良いのではないでしょうか。
パッケージが小さいのが難点ですが、パッケージが少し大きい 3SK291 でも
同じように使えるのではないかと思います。
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