144MHz帯用 プリアンプの検討 (5)
144MHzプリアンプの試作品①は残念ながら失敗におわりましたので、
FCZコイル(相当品) 7mm角 を用いて試作品②を再設計しました。
このコイルは千石電商で入手したもので、AMZコイルと似ていますが別物のようです。
インダクタンスは、約180nHのようです。
入力共振回路のインダクタンスは180nH前後ですので、そのままコイルを置き換えるだけにしました。
出力側のバンドパスフィルタのコイルは、前回設計値とインダクタンスが大きく異なりますので、
今回はこの部分を再設計します。
回路としては寺子屋シリーズキットのプリアンプと似たような構成になるので、
これを参考にさせてもらいます。
バンドパスフィルタのインピーダンスを上げるため、出力信号は二段目のコイルの二次側から
取るようにしました。
コイルの巻き数比から換算すると、バンドパスフィルタのインピーダンスは800Ωとなります。
バンドパスフィルタの定数を計算してみると、Qをかなり下げないとだめでした。
求まった定数でシミュレーションしてみると、こんな感じになりました。
GaAs FETの寄生容量や浮遊容量を考慮し、入手可能なコンデンサの値に変更して再設計した結果、
このような回路にしました。
電源電圧は 6V に変更しました。
上記の回路図は、色々と実験した結果後の定数で記載しています。
寺子屋シリーズキットも参考にしながら、EAGLE でプリント基板を設計しました。
組み上がった試作品②の基板はこんな感じです。
入出力部分は、SMAコネクタとしました。
RF部分のパスコンと出力のアッテネータ回路は、余計なインダクタンス分の影響を排除する目的で、
チップ部品を使いました。
ソース抵抗の62Ωも、チップ抵抗の方が良かったかと思います。
3216サイズの1000pFがすぐに入手できなかったので、今回は820pFとしています。
SMAコネクタとN型コネクタを繋ぐケーブルも作りました。
ゲイン特性は、トラジェネ付きスペアナで測定しました。
調整はコイルのコアを回すだけです。
入力のLC共振回路は一段だけなので、コアを回すとそれに応じてピークとなる周波数が
素直に変化してくれます。
しかし、出力のバンドパスフィルタは二段の共振回路なので、調整が分かりにくいです。
バンドパスフィルタのシミュレーションの結果から、144MHz付近ではフラットな周波数特性
になると予想されます。
入力共振回路のコアを回したときに、ピーク値の変化が144MHz付近で最大かつフラットと
なるように、出力回路の二つのコアを調整しました。イマイチな調整方法かもしれませんが。
調整後の測定結果はこんな感じです。
トラジェネのレベルは-40dBmなので、ゲインは19dB強です。
出力に3.6dBのアッテネータを入れていますので、アンプ本体のゲインとしては約23dBあり、
まあまあなのかなと思います。
ただし、NFがいくらなのかは分かりません。
調整の仕方によっては、144MHz付近でもっとゲインが上がりますが、恐らく発振しているか
もしくは発振寸前の不安定な状態なのではないかと思います。
リグ (TS-2000) にも繋いで聞いてみました。
ちゃんとしたアンテナが準備できなかったので、2X209のラジエータ (単体) を使いました。
2X209のラジエータは、室内で手持ちの状態です。
TS-2000 の "PRE" と比較してみましたが、ゲイン、S/N とも今回作製のプリアンプの方が
少し良好な感じがしました。
Sメータも振らず弱く入感している信号が、浮き上がって聞こえてきます。
ただし定量的な測定をしたわけではなく、聴感上での比較です。
2X209のラジエータを色々動かしたりしていると、Sメータが触れるぐらいにノイズレベルが
大きく上昇することがありました。
入感している信号は、ザーッというホワイトノイズ音に埋もれてしまいます。
プリアンプの試作品②、TS-2000 の "PRE" とも同じ傾向です。
ただ、Sメータの変化で比較すると、TS-2000 の "PRE" の方が、同じ条件でもノイズ上昇変化が
大きかったです。
恐らくアンテナのインピーダンスが変化し、その結果GaAs FETに入力されるインピーダンスが
最適NF条件から大きく外れることによるものと思われます。
送信だけで無く、受信としても、アンテナのインピーダンスマッチングが重要であることを体感できました。
プリアンプの試作品②は取り敢えずこれで良しとし、これからは切り替え回路を追加して
ケースに組み込んでいくことにします。
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