バラン用巻線の特性インピーダンスを測定
前から気になっていましたが、トロイダルコアに巻く撚り線(伝送線路)の
特性インピーダンスがどれぐらいかを実測してみました。
伝送線路のインピーダンスを測るには、いくつか方法があるようですが、
今回はJI0VWL局が紹介されている方法で、インダクタンスとキャパシタンスを測定し、
Z=√(L/C) から求めることにしました。
インダクタンスとキャパシタンスの測定は、アンテナアナライザを用いました。
まずは、測定系や測定方法の妥当性を検証するため、既知のインピーダンスを
持った伝送線路(同軸ケーブル)で測定しました。
同軸ケーブルは3D2V、長さは約45cmです。
8MHz、21MHz、50MHzの3条件で測定しました。
f (MHz) 8 21 50
C (pF) 47 49 64
L (µH) 0.142 0.137 0.170
z (Ω) 54.96 52.88 51.53
3D2Vのキャパシタンスは、1mあたり約100pFですので、
8MHzや21MHzではキャパシタンスもそこそこ妥当な値が出ている思います。
同軸ケーブルが短いこともあり多少の誤差はありますが、
大まかな傾向は掴めると思いますので、取りあえず今回はこれで良しとします。
さて、3本撚り線を測っていきます。
8MHzでは、インダクタンスが低すぎて測定できませんでした。
①1.0mm ポリウレタン銅線(UEW) 3本撚り(軽め) 約45cm
f (MHz) 21 50
C (pF) 106 167
L (µH) 0.103 0.128
z (Ω) 31.17 27.69
②1.0mm ポリウレタン銅線(UEW) 3本撚り(普通) 約45cm
f (MHz) 21 50
C (pF) 109 169
L (µH) 0.092 0.106
z (Ω) 29.05 25.04
③1.0mm ポリウレタン銅線(UEW) 3本撚り(少し強め) 約45cm
f (MHz) 21 50
C (pF) 112 171
L (µH) 0.072 0.079
z (Ω) 25.35 21.49
これは意外でした!!
今までずっと、平行二線の特性インピーダンスの式
Z=277×log(2D/d) D: 二線の中心同士の間隔、d: 線径
から、D<d にはならないので、Zは83Ω程度以下にはならないものと思い込んでいました。
測定の精度は悪いかもしれませんが、特性インピーダンスとしては25〜30Ω程度と
かなり低いものとなっています。
線間のキャパシタンスが効いているのだと考えられます。
そうだとすると、銅線の被覆材の厚みや誘電率も影響してくるはずです.
では、被覆材の厚さや誘電率の違うポリエステル銅線(PEW)ではどうでしょうか。
④1.2mm ポリエステル銅線(PEW) 3本撚り(かなり強め) 約45cm
f (MHz) 21 50
C (pF) 146 300
L (µH) 0.091 0.110
z (Ω) 24.97 19.10
これまたかなり低い値です。
先日測ってみた値は、大間違いでした。雑にやると駄目ですね。
ここまでの結果から、撚り線をキツく捩れば捩るほどインピーダンスが下がり、
50Ωから離れていきます。
であれば、捩らなければ上手く行くのではという訳で、
ポリエステル銅線を平行に密着させたものを測ってみました。
仮止めとして、所々マスキングテープで固定しました。
⑤1.2mm ポリエステル銅線(PEW) 平行二線(密着) 約45cm
f (MHz) 21 50
C (pF) 50 63
L (µH) 0.125 0.143
z (Ω) 50.00 47.64
何とほぼ50Ωになりました。
3本目の線も添えてみましたが、ほぼ同等の結果になりました。
にわかに信じられないので、51Ωの抵抗をこの平行三線(のうち隣り合う二線)を通して
VSWRを測定してみると、1.1以下に収まっていました。
大丈夫そうです。
ただ、密着具合がちょっと変わると、インピーダンスが変わる(上がる)ので、
中々シビアです。
平行線でバランを巻いたら上手く行きそうに思いましたので、作ってみました。
「トロイダル・コア活用百科」には、1本ずつ密着するように巻いていくと
上手く行くと書いていましたが、中々上手く密着させることができません。
仕方が無いので、ポリエステル銅線3本をマスキングテープでグルグル巻きにして固定し、
それを巻いてみました。後で所々、マスキングテープを剥きました。
VSWRは残念ながら、50MHz帯では1.3〜1.4程度でした。
マスキングテープを剥いたとき、密着具合が少し変わったかもしれないのと、
終端部分の処理でインピーダンスが暴れているのかもしれません。
しかし、これまで作ってきたポリエステル銅線やポリウレタン銅線を巻いたバランの中では、
かなりましなものです。
バランの負荷として付けた抵抗の中点を波形を見てみると、
同軸を巻いたものより半分以下のレベルになっており、
平衡度はより良いものになっていそうです。
バランを実用とするには、もう少し詰めが必要かと思いますので、
今回作製のものは採用せず、実験のみに留めることとしました。
« 50MHzのバランを作り替え | トップページ | バラン用巻線の特性インピーダンス測定結果から考察 »
「無線(アンテナ)」カテゴリの記事
- HFV5 28 MHz 帯用エレメント改造計画(2025.03.30)
- アンテナの利得に関する勘違い(2024.08.04)
- HFV-5 の調整エレメント長 (18 MHz 帯、21 MHz 帯、24 MHz 帯、28 MHz 帯)(2023.05.27)
- 1200MHz 10エレループアンテナの検討(2022.12.26)
- MMANAで円形ループアンテナのシミュレーション検討(2022.12.11)
コメント