WSJT-X User Guideには、MSK144のOQPSK (Offset Quadrature Phase Shift Keying) は、
MSK (Minimum Shift Keying) と結果的に等価であると書かれていますが、
本当にそうなのかイマイチ理解できていませんでした。
気にはなるものの、難しい数式を解いたりすることもできないので、定性的に考えてみることにしました。
まず最初に、OQPSKを調べてみると、
「I軸とQ軸の時間を1/2シンボルずらして変調したQPSKである。」(Wikipediaより)
とあり、データが遷移するときゼロ点を通らないように工夫された変調方式とのことです。
QPSKなので、データは00, 01, 10, 11の四種類ありますが、
データの遷移を考えると、下記のように12通りあります。

特徴的なのが、赤枠で囲んだ00→11, 01→10, 10→01, 11→00の四種類です。
QPSKのマッピング(コンスタレーション)は、

なので、00→11, 01→10, 10→01, 11→00の遷移は1/2シンボルのオフセットが無ければ、
一度に180°変化することになり、ゼロ点を通ってしまいます。
1/2シンボル オフセットさせることにより、
00→01→11
01→00→10
10→11→01
11→10→00
のように、90°ずつ変化することになります。
ここでよく見てみると、
00→01→11, 11→10→00の遷移は90°ずつ位相が遅れていく
01→00→10, 10→11→01の遷移は90°ずつ位相が進んでいく
ということが分かります。
一方、MSK144の副搬送波周波数は1500Hzとなっていますので、その波形はこのようになります。

また、Keying rateは2000ボーなので、0.5ms毎にデータが遷移します。
ここで、データが00→11→00→11→・・・を繰り返した場合を考えると、
このとき0.5ms毎にどんどん90°ずつ位相が遅れていきますので、波形はこのようになります。

実際には、フィルタが掛かっていて、こんなガタガタな波形ではないと思います。
周期を見てみると1msであり、周波数としては1000Hzとなります。
この場合が、 周波数として一番低い値になると考えられます。
次に、データが01→10→01→10→・・・を繰り返した場合を考えると、
このとき0.5ms毎にどんどん90°ずつ位相が進んでいきますので、波形はこのようになります。

同様に、実際にはこんなガタガタな波形ではないでしょう。
周期を見てみると0.5msであり、周波数としては2000Hzとなります。
この場合が、周波数として一番高い値になると考えられます。
以上の結果から、副搬送波周波数は1000Hz〜2000Hzの間で変化していますので、
周波数偏移幅は±500Hzであることが分かります。
通信速度が2000ボーなので、変調指数mは0.5であり、MSKであると考えられます。
実際にMSK144の信号波形を、WaveSpectraで見てみると、

となっており、上記で考察した結果と一致しています。
また、MSK144の信号をWSJT-Xのウォーターフォールで見てみると、このようになります。

占有周波数帯幅は、User Guideに記載の2400Hzより少し広いように見えます。
ウォーターフォールがポツポツとなっているのは、MSK144のDurationが72msなので、
72ms毎にデータを送っているため、1÷72ms=13.889Hz毎のサイドバンドが発生しているからです。
拡大してみると、よく分かります。

MSK144の音が、機関銃のようにズドドド・・・となっているのは、この13.889Hzですね。
極めて定性的となってしまいましたが、考察結果と実際の波形、そして変更届として出した
諸元の内容が一致したと思いますので、安心しました。
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