シュペルトップバランの原理をようやく理解
2020/3/23 に若干内容を追記しました (青文字部分)。
2021/5/16 に参考記事を追加しました。Nano VNA でシュペルトップバランの短縮率を測ってみました
ずっとコメントいただいていた、こげらさんにご指導いただいた結果、
掲題のとおりシュペルトップバランについて理解しました。
こげらさんには、お礼を申し上げたいと思います。
おさらいの意味を兼ねて、図を書き直してみると、
同相電流は表皮効果のため、"シュペルトップの外側を通って"負荷(アンテナ)
まで戻ってこようとするが、開放端のインピーダンスが無限大のため、
同相電流が流れない。
図では、インピーダンスを抵抗で表してるが、LC並列回路の方が実際的
同相電流を如何に表皮効果を持ってシュペルトップの外側に迂回させるかが重要なので、
同軸に被せる編組線と同軸の外部導体の接続部分 (上図の短絡端の部分) を
しっかりさせておくことが肝心です。
そのため色んな記事でも、その部分は銅線できつく縛ったり、しっかりハンダ付けを
するように推奨しています。
私は次のような考え方の方がイメージしやすかったです。
負荷(アンテナ)側からシュペルトップバランを見たときのインピー
ダンスは無限大、そして同相電流の発生源はその先にある。
つまり同相電流の発生源は、出力インピーダンス無限大で負荷に
給電することになる。出力インピーダンス無限大だから電流は流れない。
図において、同相電流発生源を構成している信号源の位置は、実際は
ここではなくアンテナの共振回路にあたる部分だと思います。
それと、シュペルトップバランの短縮率については、以下のようになります。
外部導体とシュペルトップで伝送線路を形成することになるが、その
短縮率は外部導体とシュペルトップの間にある物質の誘電率に依存する。
たとえば、5D2Vの外部被覆の上にシュペルトップを被せたとすれば、
外部被覆である塩化ビニルの誘電率に依存し、その値を4程度とすれば、
短縮率は0.5程度になる。
「短縮率が 0.5」 という言葉だけが一人歩きしてしまってはいけません。
あくまでも、塩化ビニルの誘電率が 4 と仮定したときの条件下です。
シュペルトップを作っても、実測して調整することが推奨されるべきと考えます。
<2020/3/23 追記>
同軸給電線の絶縁体の比誘電率を $\varepsilon_r$ とすると、
波長短縮率 $\delta$ は、$$\delta = \frac{1}{\sqrt{\varepsilon_r}}$$と表すことができます。
ここで、シュペルトップ部分の絶縁体は同軸ケーブルのシース (外部被覆) であり、
その材質 (塩化ビニル) の比誘電率 $\varepsilon_r$ を 4 とすれば、
$$\delta = \frac{1}{\sqrt{4}} = 0.5$$となり、教えていただいたことが理論的に理解できます。
シュペルトップバランの調整は、かなりシビアだということも教えて
いただきました。LC並列共振回路のインピーダンスで同相電流を阻止
するものなので、同調周波数付近における周波数とインピーダンスの
関係を考えれば、想像つきますね。
<2020/3/23 追記>
無損失線路のインピーダンスは、$$Z_{In}=Z_{O}\frac{Z_{Load}+jZ_{O}\tan{\beta l}}{Z_{O}+jZ_{Load}\tan{\beta l}}$$ただし、$$\beta =\frac{2\pi}{\lambda}$$と表すことができます。
ここで、シュペルトップを無損失線路と見なすと、終端は短絡、線路長は1/4波長なので、$$Z_{Load} =0$$$$l = \frac{\lambda}{4}$$よって、
$${\beta}l = \frac{2\pi}{\lambda}\times{\frac{\lambda}{4}} = \frac{\pi}{2}$$$$Z_{In} = Z_{O}\frac{0+jZ_{O}\tan{\beta l}}{Z_{O}+j0} = jZ_{O}\tan{\beta l} = jZ_{O}\tan{\frac{\pi}{2}} = \infty$$ということで、シュペルトップのインピーダンスが無限大であることがわかります。
周波数や長さの関係が変わると、${\beta}l$ が ${\pi}/2$ からズレていきますので、
$\tan{\beta l}$ の絶対値が $\infty$ からどんどん小さくなるため、同相電流の抑圧効果が減少し、
バランとしての性能が低下することがわかります。
シュペルトップバランの重要な点は、
・同軸に被せる編組線と同軸の外部導体とを接続する部分
・同軸に被せる編組線の長さ (シュペルトップの長さ)
だと思います。
また別のバランとして、分岐導体バランをご紹介いただきました。
少し興味を持ちましたので、今回作ろうとしているバランの候補の
一つにしたいと思いました。
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